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-六道輪廻-
何度生まれ変わったとしても 君を探し出すと誓う 
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夢だって、誰か言って。



目を覚ました。中條晶子(女子2番)は未だに重い瞼を無理やり持ち上げて辺りを見回す。
どうやら、ここは教室のようだった。薄暗く部屋全体の様子はよく見えないが、教室だということは綺麗に並べられた机や、大きな黒板から、教室と呼ばざるをえない空間にいることは確かだった。
でも、わたし達はさっきまでバスに乗っていたのにどうして…?
 
隣を見るといつも通り幼なじみの神尾龍之介(男子3番)が机に突っ伏したまま気持ち良さそうに眠っているのが見え、晶子はふっときつ目の切れ長の瞳を緩めた。
 
「龍」
 
小さく龍之介の名前を呼んだが、反応はない。
ふうと小さくため息をつくと、隣の龍之介ではなく意外なところから声が帰ってきた。
晶子がそちらを振り返ると、成瀬萌(女子3番)が不機嫌だと言わんばかりに眉を顰め(ほんとにこの子は、男の前と女の前では態度がころっと変わるんだから。男の前ではこんな顔、絶対しないくせに。)晶子と目が合うなりゆっくりと気だるげに立ち上がった。
 
「ちょっとー晶子ちゃん、これどうゆうこと?萌達、どうしてこんなとこにいるわけ?」
 
「わたしもわからなくて。とりあえずみんなを起こさない?」
 
「もうー!藤くんのドッキリとかだったら、萌、許さないんだから!」
 
萌の言葉に晶子は龍之介の身体を揺すりながら、担任の藤丸英二のことを思った。
若くてノリが良く、それでいていたずら好きの彼のこと。萌が言うようにこれが私達を驚かすための仕掛けだということも考えられる。でも、藤くんがそれだけのためにクラス全員をこんなところに運んで、薄暗い教室に眠らせて?
 
「あれ…あっこ?」
 
「龍、やっと起きたの?」
 
手を延ばして、龍之介の髪に付いた埃を払う。
ごめんと彼が小さな声で言うと同時に顔を上げ…その形の良い瞳を丸くした。龍之介の視線は、晶子の首に。
そこには、龍之介にもらったネックレスが輝いているはずだ。それなのにみるみる強張っていく龍之介の表情に晶子は不安を覚え、彼の視線の先、自分の首元に手を当てた。そして『それ』に気がついた。
 
「あっこ、首輪…」
 
「なに、これ?」
 
自分の首に巻きつけられた金属の存在を認識した瞬間、上手く息ができない錯覚に陥る。
ネックレスの細いチェーンが、それに当たって軽い音がする。
不意に辺りを見回すと、後ろの席の櫻田かおる(女子1番)が、今にも泣きそうな表情で晶子を見上げていた。
そしてその細い首を見て晶子は愕然とした。やっぱり、間違いない。晶子とかおるだけではない。
龍之介も、萌にも。
その萌に起こされて眉間に皺を寄せている柏谷天馬(男子1番)にも、いまだに眠そうに椅子にもたれかかっている大塚千晴(男子2番)にも。
クラス全員、誰一人例外などなく首輪が光っていたのだ。
 
しん、と教室が静まり返る。
なんなんだ、これは。
晶子は震える手で制服のポケットから携帯電話を取り出し、それを開いてみると時刻は夜の22時を回っていた。
 
「藤くんに、電話してみる?」
 
「だめ、圏外みたい。それにもう10時回ってる。」
 
「えぇ?そんな夜なの?そんなのもうとっくに家に帰ってる時間だし、ほんとにどうなっちゃってるの?」

「かおるちゃんも、何も聞いてないよね?」

「うん…いつもは何かあったら委員長の私に連絡があるんだけど、今回はなにも…。」
 
かおるが申し訳なさそうに瞳を伏せると、萌が苛立ったように眉を寄せた。
そんな萌の様子に、かおるを庇うように口を開いたのは千晴だった。
 
「とりあえず、さ。ずっとこうしてても仕方ないし、人を呼んでこようよ。」
 
まるで慣れ親しんだ教室のような空間は、確かにとても居心地が悪かった。似ているけど、明らかに違う。
窓もなく、殺伐とした部屋は、黒板と机とテレビがあるだけで他には何もない。
千晴の言葉にうなづいて龍之介が立ち上がり、恐る恐るドアに手をかけた。

しかし、ドアが空く気配はない。
 
「龍…?」
 
「開かないんだ、ドアが。」
 
「ちょっとぉ、龍之介くん、冗談やめて?」
 
「成瀬、どいて。」
 
某然と立ち尽くす晶子と萌の間をすり抜けて、天馬が龍之介の横からドアに手を伸ばす。
しかし、2人の力を合わせてもドアには鍵がかかっているのか、龍之介の言うとおりドアが空く気配はなかった。
 
しん、という音が聞こえた気がした。
再び6人の間を沈黙が包む。
どこからかすすり泣くような声が聞こえ晶子が振り返ると、かおるの瞳から恐怖からか涙が零れ落ちるのが見えた。
それを見た天馬が呆れたように、しかしどこか苛立ったように音を立て席に座る。
 
「もう、天ちゃんってばー!短気なんだからぁ。」
 
天馬を茶化すように、萌が声をかけるとうるさいよ、と天馬の声が聞こえた。
萌はくるんとした愛らしい瞳を一段と大きく開くと、肩をすくめて天馬の隣の席についた。
 
「かおるちゃん、大丈夫?」
 
晶子がかおるの顔を覗き込むと、かおるは急いで涙を制服の袖で拭って頷いた。
赤い縁の眼鏡の奥、瞳が真っ赤になっている。もともと慰めるという行為が苦手な晶子は、かおるにかける言葉を頭の中で必死に探していた。


その時だった。
 

ドアの向こうから、コツコツと足音が聞こえ始めた。うな垂れていた龍之介もはっとして顔を上げる。
龍之介が何かを察したのかドアから離れ、晶子の方を見た。
目が合う。こんなに困った龍之介の顔は久しぶりに見る。
最近は男らしくなって、だいぶ頼もしくなったって思ってたのにまだそんな顔してーーー。
 
「誰か、来る。ひとりじゃない…何人か…。」
 
呟くように千晴が言った次の瞬間、音を立ててドアが開いた。
側にいる龍之介を見下ろすように立つ、スーツの男。
ホストみたいな真っ白なスーツに、かっちりとセットされた髪。キリッとした眉の下の、冷たい瞳。
 
「何をしている。席に着け。」
 
氷のような視線に射抜かれて、龍之介が凍りついたように立ち尽くしていた。
千晴も、動けずにただスーツの男を見つめている。
晶子もこの状況を何ひとつ理解することが出来ずに、隣のかおるが自分の袖を引くのに、意識を保っていた。
 
「まぁまぁ、五郎ちゃん、そんな風に言わんといて?始めやし、状況が飲み込めんのとちゃう?」
 
「ヲサムの言う通りだよ!ほれ!ぼうっと突っ立ってないで席に着きな!」
 
「いや、虎崎さん、それ五郎ちゃんと一緒のこと言ってるやん!」
 
 
この空気を理解してか、そうでないのかわからないが、スーツの男の後ろから、チューリップハットに花柄のシャツを纏った若い男(ヘラヘラして、スーツの男とはだいぶ雰囲気が違う)と、ピンク色の派手なジャージを着たおさげ髪の年配の女性が明るいテンションで現れた。
どちらの指示も、結局は席に着けということらしい。
晶子はかおるを席に着くように促すと、龍之介に駆け寄った。
龍之介は未だドアの側から動けずに、スーツの男を睨みつけている。
 
「龍!」
 
彼のシャツを引っ張り、どうにか冷静さを取り戻して欲しいと冷たい手に触れると、龍之介がはっとしたように晶子に目を向けた。
 
「あっこ…」
 
弱々しい声で名前を呼ばれ、それに頷くと龍之介は踵を返し席へと戻って行った。
それを追いかけるように晶子も元いた席に座り、こうして6人全員が普段の教室と同じように並べられた机に着くこととなった。
それを見てスーツの男は満足気に目を細めると、そこが定位置だと言わんばかりに教壇の前で足を止めた。
チューリップハットの男と、ジャージの女も隣に付く。
教室のドアからは他にもゾロゾロと迷彩服を着た軍人らしき人が何人か入って、晶子たちの周りを取り囲んだ。
見間違いでなければ、彼らの手には映画でみるようなライフルが。
 
 
なにこれ。一体、何だっていうの。
 
 
晶子の背中を、冷や汗が流れる。初めて感じる、潰されてしまいそうな重い空気。
 
 
「諸君、おめでとう。」
 
 
スーツの男が口を開いた。
地鳴りのような、低く、それでいて氷のように綺麗な声だった。
晶子は顔を上げる。
 
 
「君たちは、この大東亜共和国の名誉ある第68番プログラムに選ばれた。」

 
逝ってよし!
そう言って、スーツの男が親指以外の4本の指をビシッと前に突き出した。
プログラム…?誰かが呟く。
晶子は某然と、ただその美しい指先を見つめていた。





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