<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:blogChannel="http://backend.userland.com/blogChannelModule" >
  <channel>
  <title>-六道輪廻-</title>
  <link>https://rokudourinne.3rin.net/</link>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="self" type="application/rss+xml" href="https://rokudourinne.3rin.net/RSS/" />
  <description>何度生まれ変わったとしても　君を探し出すと誓う</description>
  <lastBuildDate>Sun, 15 Dec 2013 16:27:36 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com/" />

    <item>
    <title>試合開始～生き残るべきは～</title>
    <description>
    <![CDATA[<span style="color: #999999;">　<br />
　<br />
さて、問題です。</span><br />
<br />
<span style="color: #999999;">このクラスの中で、誰よりも生き残るべきなのは、誰でしょう。</span><br />
&nbsp;<br />
&nbsp;<br />
◆&nbsp;<br />
<br />
&nbsp;<br />
「男子３番、神尾龍之介。　逝ってよし」<br />
<br />
<span style="color: #ff99cc;">中條晶子（女子２番）</span>が教室を出てから１０分程経った頃、<span style="color: #800080;">榊原五郎（担当教官）</span>の低く静かな声が、人数が減り最初よりも広く感じるようになった空間に響いた。<br />
名前を呼ばれたことに驚いたのか、びくっと跳ねるように頭を起こした<span style="color: #3366ff;">神尾龍之介（男子３番）<span style="color: #000000;" color="#000000">の</span></span>明るい髪色の後頭部を、<span style="color: #ff99cc;">成瀬萌（女子３番）</span>は見つめていた。<br />
授業中なんかには、こくりこくりと舟を漕いでいたり、いきなりびくっと体を震わせた後に慌てて周りを見渡したりするのと同じくらいに見慣れた仕草だったのだけれど、今回はそんな平和的な話ではない。<br />
戦場に行くように、という赤札のような宣告を受けたのだから。<br />
<br />
龍之介が床に置かれた鞄を手に取る時、横顔ではあったけれどもその表情が見えた。<br />
普段の明るい弾けるような笑顔は見る影もなく、浅黒い肌は血の気が引いているからかやけにくすんで見えたし、いつもなら生気に満ちていた瞳はどこか虚ろ――ただ、伏せ目がちの龍之介くんはなかなか見られないのだけど、やっぱりかっこいい人はどんな表情もかっこいいと思った。<br />
さすがは、萌が惚れた男の子。<br />
<br />
龍之介は立ち上がりざま、唯一教室に残されることになる萌に目を向けた。<br />
<br />
「龍之介くん&hellip;」<br />
<br />
小さく名前を呼ぶと、龍之介はふっと優しい笑みを浮かべた。<br />
これまでに見たことのないような悲しげで儚げで優しげな表情に胸がぎゅっと締め付けられるような感覚を憶え、萌の双眸からは自然と涙が零れ、頬を伝った。<br />
<br />
「龍之介くん&hellip;龍之介くん&hellip;っ」<br />
<br />
「萌ちゃん&hellip;泣くなって、大丈夫、なんも怖くないからさ。　だって、俺らだぜ？　誰も、誰かを傷付けるはずない」<br />
<br />
龍之介くんだって、本当は怖いくせに。それなのに、萌を気遣って、優しい言葉をかけて励ましてくれる。<br />
萌は、そんな龍之介くんの優しさが好き。大好きなんだよ。<br />
萌が口角を少し持ち上げて笑みを返すと、龍之介は小さく頷き、萌に背中を向けて教室の前方へと向かった。<br />
<br />
<span style="color: #3366ff;">大塚千晴（男子１番）</span>が戸惑いながら言い、<span style="color: #ff99cc;">櫻田かおる（女子１番）</span>が泣きじゃくりながら呟き、<span style="color: #3366ff;">柏谷天馬（男子２番）</span>が不機嫌さを前面に押し出して吐き捨て、晶子が感情の感じられない一本調子で読み上げた『私たちは殺し合いをする』という洗脳の言葉を、龍之介は普段よりは覇気はないけれどそれでもはっきりとした口調で言い切った。<br />
１人に１つずつ渡しているデイパックを<span style="color: #800080;">渡部ヲサム（担当教官補佐）</span>から受け取ると、龍之介は重傷を負い椅子に座らされている担任の<span style="color: #800080;">藤丸英一</span>の前に立ち、その肩にそっと触れた。<br />
<br />
「藤くん、大丈夫だから。　俺ら仲良しなの、藤くんはちゃんと知ってるっしょ？　みんなでどうすればいいか考えるからさ、だから、大丈夫」<br />
<br />
ハッ、という吐き捨てるような笑いが聞こえ、龍之介は顔を上げ、声の主である<span style="color: #800080;">虎崎れんげ（担当教官補佐）</span>を見遣った。<br />
虎崎は教卓に置かれていたバインダーを手に取ると舐め回すように見た後、にいっと笑みを浮かべて龍之介を見返した。<br />
<br />
「&ldquo;仲良し学級&rdquo;&hellip;ねぇ」<br />
<br />
「&hellip;そうだよ、俺ら付き合い長いし、すっげー仲良し&hellip;だから、プログラムなんて成り立つはずが――」<br />
<br />
「本当にそうかい？　本当に、何一つ確執のない、亀裂のない、互いを憎んだり傷付けたりすることの一切ないクラスだったのかねぇ？」<br />
<br />
萌の位置からは龍之介の横顔しか見えなかったのだけれど、虎崎の言葉に、龍之介は大きく目を見開いた。<br />
目を泳がせ、唇を戦慄かせ、２歩程よたついた後、踵を返して教室を飛び出した。<br />
何か、思い当たる節があるのだろうか。<br />
もしかして、萌が龍之介の幼馴染である晶子と仲が悪いことを思い出し、晶子を守らないといけないとでも思ったのかな――そうだとしたら、とっても傷つくんですけど。<br />
<br />
クラスメイトが誰もいなくなった教室を見渡した。<br />
小さく溜息を吐いた後、萌は鞄に手を伸ばし、淡いピンク色で大きなリボンが付いた化粧ポーチを取り出し、机の上に置いた。<br />
手鏡に自分を映す。目が腫れちゃってる、泣きすぎちゃったかな。髪が乱れてるのはあのオバサンに掴まれたからだよね、大体あんなに怒ることないじゃない、更年期障害ってヤツ？唇が乾燥してる、この前おろしたばかりの桃の香りのリップはポケット&hellip;じゃなくてポーチに入れたんだっけ。<br />
制服の上着のポケットに伸ばしかけた手を止め、ポーチの中を探っていると、渡部が戸惑いを含む声を出したので、萌は顔を上げた。<br />
<br />
「え&hellip;え、え？成瀬さん&hellip;え？？」<br />
<br />
「なんですかぁ？プログラムって、身なりを整えるのがダメとか、そういう決まりでもあるんですかぁ？」<br />
<br />
「や&hellip;いやぁ&hellip;ないけど&hellip;構へんねんけど&hellip;」<br />
<br />
「じゃあなんですかぁ？　&hellip;まあ、萌のこと見ていたい気持ちはわかるんですけど」<br />
<br />
国の偉い人（なのかな？）まで虜にしちゃうなんて、さすが萌。でも、あの人はあんまり萌の好みじゃないかなぁ、無精髭って好きじゃないし。多分若い人なんだろうけど、若いなら若いなりに、藤くんみたいな爽やかさが必要だと思うのよね。まだ、あっちのスーツの人の方が良いかなぁ、身だしなみに気を遣ってそうな辺りが。<br />
<br />
「あっはっはっ！！さっきはあんだけピーピー泣いてたのに、肝据わってるんだねぇ！！この状況が怖いとか言ってたのは演技かい？！」<br />
<br />
今度は虎崎が大声を上げて笑った。<br />
オバサンの笑い声って不快。萌はあんなオバサンにはなりたくないなぁ。<br />
そんな感情は表に出さず、萌は髪を整えた手を止め、虎崎に目を向けた。<br />
<br />
「えぇ～、怖いのは本当ですよぉ？本当にいっぱい泣いちゃったせいで、目が腫れて困っちゃってるくらいだしぃ。でも、外でまた龍之介くんたちに会うかもしれないんだから、ちゃんとしておかないと、会った時にがっかりさせちゃうでしょ？&hellip;まあ、髪が乱れてたり目が腫れてたりする位じゃ、萌の可愛さは変わったりしないんだけど」<br />
<br />
萌みたいに可愛い子は、男の子たちをがっかりさせないように、いつだって最大限可愛くあるべきだと思うのよね。アイドルだってそうじゃない？あ、もちろん萌はその辺のアイドルより可愛いけど。<br />
そう付け加えると、笑い声を上げていた虎崎はその不快な声を止め、あんぐりと口を開いてぽかんと萌を見つめていた。<br />
あまり身なりを気にしてなさそうな人だから、萌の言葉に目から鱗ってヤツだったのかな？<br />
<br />
「&hellip;準備はいいか。女子３番、成瀬萌。逝ってよし。なお、２０分後には当エリアは禁止エリアになるので注意するように」<br />
<br />
名前を呼ばれ、萌はポーチを鞄に入れて立ち上がった。<br />
皆が言わされた言葉を繰り返し、デイパックを受け取った。うーん、萌には似合わないなぁ。<br />
<br />
「藤くん&hellip;？」小さく名前を読んでみたのだけれど、返事がない。龍之介が声をかけた時も返答がなかったので、気絶してしまったようだ。<br />
<br />
「お大事にね、藤くん&hellip;」<br />
<br />
「頑張ってきぃや、成瀬さん！」という渡部の声を背中に受けながら、萌は教室を後にした。<br />
<br />
<br />
外に出ると、萌はまっすぐ進んだ。建物の側をうろうろしていたら、禁止エリアとやらに引っ掛かりかねない。首輪が爆発するだなんておぞましいったらない。<br />
誰かに襲われるかも、などという心配はしていなかった。龍之介が萌に言ったように、誰かが誰かを、というよりも誰かが萌を傷付けるはずなんてないと思った。<br />
<br />
かおるちゃん。<br />
かおるちゃんってば委員長のくせにのんびりしてるのがイラッとする時もあったけど、だからこそプログラムの中では誰よりも脅威だとは思えない。&ldquo;ジンチクムガイ&rdquo;って、あの子のことだと思う。<br />
まあ、いい子だとは思ってる。萌ってばこんな恵まれた容姿だからか、女の子には僻まれたり妬まれたりして好かれないんだけど、かおるちゃんはそういうこと、なかったもんね。<br />
<br />
晶子ちゃん。<br />
普段からあまり仲良くすることってなかったし、何となく好かれてないのはわかってた。だけど、晶子ちゃんはそれを理由にして人を傷付けることはしないと思う。そういう子だったら、もっとたくさんぶつかってたと思うもの。<br />
モデルみたいで、しっかり者で、大人びてて――正直、好きじゃない。外見がどうとか、中身がどうとかよりも、龍之介くんと幼馴染だからって一緒に登下校してたりするのがすごく嫌。ずるいじゃない。<br />
<br />
千晴くん。<br />
千晴くんって、イマイチ何を考えているのかわからない時はある。だけど、文化系だし、絵を描いたり雲を眺めたりしているような千晴くんが、人を傷付けるとは思えない。<br />
そういえば、千晴くんって、萌や晶子ちゃんのことは名字で呼ぶのに、かおるちゃんだけは名前で呼んでたなぁ。部活が同じだからかな、と思ってたんだけど、もしかしたらもしかするのかも？千晴くん、萌のことは好きだと思うんだけど（男の子が萌のこと好きじゃないなんてありえない）、きっと萌は&ldquo;高嶺の花&rdquo;だからかおるちゃんで妥協したのかな？<br />
<br />
天ちゃん。<br />
天ちゃんは、誰よりも萌を傷付けるはずない。さっきはあのオバサンから萌のこと護ってくれたし、普段から萌のこと気に掛けてくれてたもの。<br />
普段はツンツンしてるけど、萌、知ってるよ。天ちゃんってばツンデレってヤツで、実は萌のこと大好きなんだよね？うーん、その気持ちは嬉しいんだけど、応えられないや。だって、天ちゃんは小さくて可愛いもの。もっと背が高くて男らしければ、隣にいる萌の可愛さが引き立つから気持ちに応えても良いんだけど&hellip;。だから、せめて、晶子ちゃんとのことは応援してるよ。<br />
<br />
龍之介くん。<br />
自分だって不安で怖かったくせに、萌のこと心配してくれた。きっと萌に会えたら、笑顔で迎えてくれて、抱きしめてくれると思うの。萌を傷付けるなんてありえない。<br />
ああ、ほんと、龍之介くんのこと好きだなぁ。だって、もちろん優しいところはたまらなく好きなんだけど、あの容姿。かっこいい彼氏と可愛い彼女、とっても絵になるじゃない。ちょっと色黒の龍之介くんの隣の萌はより色白に見えると思うし、例えばキスをする時には頑張って背伸びをする萌――ああ、とっても可愛いわ、我ながら。<br />
<br />
ほら、誰も彼も萌を傷付けるはずがない。<br />
クラスメイトたちへ思いを馳せながら歩いていると、微かに水の流れる音が聞こえてきた。確か、教室で見た地図によれば、会場の中には川が流れていた。それは管理事務所のあるＢ－３エリアではなかったはず、どうやら禁止エリアに引っ掛かることはなくなったようだ。<br />
<br />
萌は川の傍の岩に腰を下ろした。<br />
デイパックから地図を取り出し、改めて自分のいる場所がＢ－２エリアであることを確認した。<br />
更にデイパックの中を探り、水の入ったペットボトルや、不味そうなパンを確認し――奥底に入れられた箱の存在に気付いた。<br />
箱を取り出し、そっと蓋を開け――ごくり、と唾を飲み込んだ。<br />
箱の中に入っていたのは、これまでテレビドラマや映画でしか見たことがなかった、銃だった。全長は２０ｃｍ弱、基本的には黒色だがスライドはシルバーに光る、全体に丸みを帯びた自動拳銃――<span style="color: #800000;">Ｓ＆Ｗ　シグマ</span>と説明書には書かれていた。<br />
ごつくないだけマシかもしれないけど、萌に似合わないなぁ。萌が持つより、萌を護ってくれるボディーガードが持つのに相応しいと思うんだけど。<br />
<br />
ただ&hellip;<br />
<br />
萌は、じっとシグマを見つめた。<br />
これを上手に使うことができるなら、生き残れるような気がする。<br />
これはプログラム、みんなは萌のことを傷付けないだろうけれど、それではいつまで経っても終わらない。<br />
<br />
かおるちゃん。晶子ちゃん。千晴くん。天ちゃん。龍之介くん。<br />
&hellip;&hellip;ごめんね。<br />
<br />
たった６人の学級。一緒に勉強して、一緒にご飯を食べて、一緒に遊んだ、たった６人のクラスメイト。皆がいなくなることを想像するだけで、悲しい気持ちになる。<br />
けれども、ここで萌がいなくなるわけにはいかない。学校には萌のことを大好きな男の子たちがたくさんいてきっと皆が萌の帰還を待っている。それに、萌がいなくなれば、これから先萌に出会う予定だった全ての男の人たちの人生に大いなる損失を与えることになってしまう。そんなの、可哀想すぎるでしょう？<br />
<br />
「&hellip;待っててね、みんな。　萌、頑張るからね」<br />
<br />
<br />
◆<br />
<br />
<br />
<span style="color: #999999;">このクラスの中で、誰よりも生き残るべきなのは、誰でしょう。</span><br />
<br />
<span style="color: #999999;">正解は&hellip;</span><br />
<br />
<span style="color: #999999;">萌、でしょう？<br />
<br />
<br />
<br />
<span style="color: #000000;">【残り６人】</span></span>]]>
    </description>
    <category>本編</category>
    <link>https://rokudourinne.3rin.net/%E6%9C%AC%E7%B7%A8/20131222</link>
    <pubDate>Sat, 21 Dec 2013 16:22:35 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">rokudourinne.3rin.net://entry/8</guid>
  </item>
    <item>
    <title>試合開始～確かなる歪み～</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<br />
気づかなかった。<br />
<br />
こんなにすぐ近くに、亀裂があったなんて<br />
&nbsp;<br />
<br />
◆<br />
&nbsp;<br />
<font color="#1e90ff">大塚千晴（男子１番）</font>は出発してから、とにかく自分のいる公園管理事務所エリアＢ－３を出る事だけを考えた。<br />
自らを新しい担任だと名乗った榊原五郎の話では、出発した生徒がこのエリアを出るまで次の人が出発できないということだった。<br />
最初に出発した自分がもたついていたら、何時までたっても次が出発できないということだ。<br />
ずっと自分がここで留まっていれば、みんなが出発できなくて、ずっと殺し合いなんてしなくてもいいのでは&hellip;なんていう甘い考えも頭を過ぎったが、千晴はそれを振り払って進み続けた。<br />
<br />
エリアを出る際に、千晴はどこに進むべきか悩んだがＣ－４の売店を目指すことにした。他のクラスメイトを待つという考えももちろんあったけれど、それを止めたのは管理事務所エリアが意外と広く、どこで待っていればいいか考えても分からなかったからだ。<br />
とりあえず食料を確保するためには、地図を見る中では売店が一番都合が良い。<br />
この青春海立運動公園には何度か千晴も足を運んだことがあったけれど、ここの売店は商品が充実しており、食料品や飲料水以外にもキャンプのグッズや、怪我に備えての治療用薬品等もあった記憶がある。<br />
殺し合いなんてするつもりはないけれど、&ldquo;もしも&rdquo;のための準備をしておくに越したことはない。そ<br />
う考え、千晴は足を進めながら自分の考えを鼻で笑った。<br />
&nbsp;<br />
<br />
もしも、か。<br />
<br />
&nbsp;<br />
『私たちは、殺し合いをする』<br />
<br />
『やらなきゃ、やられる』<br />
<br />
本部を出発する時、<font color="#8b008b">渡辺ヲサム（担当教官補佐）</font>に言わされた言葉が突き刺さる。<br />
言わされたとはいえ、もう二度と口にしたくない言葉だ。<br />
あの言葉を口にした後の、<font color="#8b008b">藤丸栄一（３年星組担任）</font>の泣きそうな声を思い出すと今にも胸が張り裂けそうだった。藤くんは、きっと最後まで俺たちのプログラムに反対して、あんなに傷だらけになるまで殴られて。それでも、責任を感じている。<br />
藤くんのためにも、絶対殺し合いなんてしたくない。<br />
<br />
---出来るはずがない。<br />
<br />
&nbsp;<br />
自分を含めて、たった６人しか居ない星組のクラスメイト。一年次からの持ち上がりで、あまり人付き合いが上手くない自分も心を開くことができた、大切な友人達だ。<br />
ずっと、それなりに楽しくやってきたし、彼らを信頼している。３年間机を並べて、楽しいことも、辛いことも共有してきた。<br />
どうやったって、このクラスで殺し合いなんて、できるはずがないのだ。<br />
&nbsp;<br />
売店に到着し、千晴は自動ドアの前に立った。<br />
電気は通っていないようだが鍵は掛かっておらず、自動でドアは開かなかったものの、簡単に手で開けることが出来た。<br />
中は千晴が以前来た時となんら変わっておらず、想像通り所狭しと物が並んでいる。<br />
千晴は店をぐるっと一周した後、デイバックの中身を確認すべく腰を下ろした。<br />
武器を確認したり、もしものことを考えたり、自分の行動は矛盾しているとは思いながらも、千晴は慎重にバックの中に手を入れた。なにか長い、見慣れぬものが目に入ったからだ。<br />
<br />
&nbsp;<br />
「刀&hellip;か？」<br />
<br />
&nbsp;<br />
ゆっくりと取り出したそれは、<font color="#a52a2a">海軍刀</font>だった。鞘に収まってはいるものの、独特の曲線を描いたそれは、普段決して手に取ることのない明らかなる武器だった。<br />
千晴はなんだか怖くなって、すぐにそれをバックに仕舞い込んだ。急に殺し合いの現実を目の当たりにしたようで、刀を取った手がガタガタと震えている。冷や汗が背中を流れていくのが分かった。<br />
&nbsp;<br />
<br />
「ハル？」<br />
&nbsp;<br />
<br />
突然、背後から声をかけられ千晴の心臓が跳ね上がった。<br />
声がした入り口に目を向けると、きゅっと結い上げられたお団子頭が目に入った。<br />
&nbsp;<br />
<br />
「中條さん！」<br />
&nbsp;<br />
<br />
千晴が振り返って名前を呼ぶと、<font color="#ffc0cb">中條晶子（女子２番）</font>は切れ長の瞳を緩ませて、ほっと息を吐いた。<br />
この状況にも取り乱した様子はなく、いつもと同じ凛とした空気を纏っている。クラスで一番大人びていて、普段から頼れるお姉さんといったポジションの女の子だ。<br />
こう言っては可哀想だが、クラス委員勤めている<font color="#ffc0cb">櫻田かおる（女子１番）</font>よりも、よほどしっかりしていると思う。（これを言うと、かおるちゃんは拗ねるんだよな。まぁ、それが面白いんだけど）<br />
晶子がここに来たのは、おそらく自分と同じ目的のはずだ。千晴が立ち上がり晶子の傍に足を運ぶと、晶子はにっこりと微笑んだ。<br />
&nbsp;<br />
「やっぱり、ここに来たんだ。」<br />
<br />
<br />
「うん。とりあえず、サバイバルには食料かなって&hellip;。俺の次に出発したの、中條さん？」<br />
<br />
<br />
「ううん。結局最初のハルだけくじ引きで、その後は名簿順だったの。<br />
だから、わたしの前にかおるちゃんと、天ちゃんが出発してるんだけど&hellip;ここには来なかったみたいね。」<br />
<br />
&nbsp;<br />
晶子の言葉にふと腕時計に目を落とすと、何時の間にか千晴が出発してから１時間以上の時間が経過していることに気がついた。<br />
<br />
晶子の言うとおり、かおると<font color="#1e90ff">柏谷天馬（男子２番）</font>はここには来ていない。<br />
そのことに千晴は少し焦りを感じていた。<br />
千晴の考えではここで食料などをある程度調達した後、かおるを迎えに行く予定だった。<br />
もちろん、かおるに会える確証などなかったし、他のクラスメイトとも合流できるのならばそれに越したことはないのだけれど、教室でのかおるの様子を見る限り、とにかく彼女が心配で仕方なかった。<br />
小刻みに震えて、涙を流していたかおる。きっと、怖くて、心細くて、今も泣いている。<br />
急に焦燥感に駆られる感覚に、千晴は背中を押されるように棚にあった菓子パンやスナック菓子、ミネラルウォーター、絆創膏と包帯をバックに詰め込んだ。本当はもっと使えるものを吟味したかったのだけれども、そんな時間はない。<br />
こうしている間にも、かおるがどこかで泣いていると思うと、居てもたってもいられなかった。<br />
&nbsp;<br />
<br />
「ハル？」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「ごめん、中條さん。俺、かおるちゃんを探しに行かないと。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
突然焦り始めた千晴を不思議に思ったのか声をかけてきた晶子に、千晴は真剣な瞳でそう返した。<br />
晶子ははっとしたように目を見開いた後、力強く頷いてくれた。しかし、少し考えると、もう今にも入り口から飛び出して行ってしまいそうな千晴の右手首を、引き止めるように掴んだ。<br />
&nbsp;<br />
<br />
「でも、当てはあるの？」<br />
<br />
&nbsp;<br />
「ない&hellip;。でも今ならそう遠くには行っていないと思うんだ。かおるちゃん、かなり怯えてみたいだったし&hellip;。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「そう、よね。でも、せっかく会えたのにここで別れるのはあまり良い案だとは思わないな。<br />
ハルだって、このクラスで殺し合いだなんて、馬鹿げてるって思うでしょ？」<br />
<br />
&nbsp;<br />
千晴は晶子の冷静な声に、走り出そうと準備していた体をゆっくりと晶子の方へ向けた。<br />
彼女の言っていることは尤もだ。どうやったって、このクラスで殺し合いなんて出来るはずがないし、自分も、きっと目の前の晶子もお互いを殺す気なんてさらさらない。<br />
必死になってかおるを探すのは、誰かから守るためではなくて、ただ、かおるをひとりにしたくないからだ。それだったら、晶子とこのまま合流して、一緒にかおるを探してもらうのもいいかもしれない。<br />
その方が、後々全員で集まることの出来る可能性が高くなるのでは？<br />
&nbsp;<br />
<br />
「わたしと萌だって、普段は全然仲良くなんてなかったし、今だって好きかって言われたら微妙だけど、<br />
だったら殺せるかって言われたらそんなこと出来ない。きっと萌も同じだと、思う&hellip;。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
少しバツが悪そうに話す晶子に、千晴は少しだけ笑った。<br />
確かに<font color="#ffc0cb">成瀬萌（女子３番）</font>と晶子は折り合いが悪く、今も冷静で感情に流されない晶子と、わがままで天真爛漫な萌とではタイプがまったく違うけれど、晶子の言うとおり２人が殺し合いをすることなど想像できなかった。<br />
晶子の幼馴染である<font color="#1e90ff">神尾龍之介（男子３番）</font>が出発し、萌も、もうそろそろ出発する頃だ。今本部の方に戻れば、先に２人と合流できるかもしれない。<br />
<br />
&nbsp;<br />
「中條さんがここ、本部エリアの外にいるってことは、もう龍は出発したってことだよね。<br />
このまま合流するなら、かおるちゃんを探す前に龍を迎えに行く？」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「あ、それは大丈夫。龍とは、待ち合わせしてるの。ここの隣の、体育館で。そもそもここに寄ったのは、龍と会う前に食べる物とかを確保したかったのと、ここなら、誰かいるんじゃないかっと思ったから&hellip;。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「待ち合わせ？どうやって？」<br />
<br />
&nbsp;<br />
「紙の切れ端にエリアと体育館って文字を書いて、出発の時に龍の机に置いてきた。<br />
もしかしたらあの人達は気づいてたかもしれないけど、きっとそれくらいは見逃してくれるのね。何回も何回もプログラムを見てきた人達からすれば、きっと、よくある事なのよ。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
あとは龍が地図を間違えないことを願うわ。晶<br />
子はそう言って少し困ったように眉を下げて笑った。彼女のその笑顔を見て、少し胸が痛んだ。<br />
晶子も大人びているとはいえ、かおるや萌と同じ中学３年生の女の子だ。やっぱりこんな状況は怖くて、誰かに頼りたいのは同じはず。それなのに、自分は晶子をおいて、かおるを探しに行こうとしてしまった。<br />
晶子に対し少しの罪悪感を覚えながらも、それと同時に晶子の中の、龍之介の存在の大きさが分かったように思えた。やっぱり、こんな時に晶子が頼るのは、彼女に想いを寄せる天馬ではなく、幼馴染の龍之介なのだ。そう思うと、天馬が少し不憫にも感じたが（ごめん、天ちゃん）、これまでずっと、幼馴染として隣に居たのは龍之介だ。天馬の想いを知らない晶子にとっては、当然のことなのかもしれない。<br />
<br />
&nbsp;<br />
「ねぇ、でもやっぱりそうだったのね。」<br />
<br />
&nbsp;<br />
「そう、って、なにが？」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「ハルって、かおるちゃんのこと、好きだったんだなぁって。さっき本当に必死で、びっくりしちゃった。普段からすごく、いい感じだったものね。ほのぼのカップルって感じで。」<br />
<br />
&nbsp;<br />
「え、や、違うよ！かおるちゃんは、妹みたいな&hellip;とにかく可愛くて&hellip;。好きとか、そんなんじゃ&hellip;」<br />
<br />
&nbsp;<br />
しどろもどろになって弁解する千晴に、晶子はまた小さく笑った。顔が熱い。今、自分の顔は真っ赤に違いない。<br />
かおるのことは、本当に大切で可愛くて仕方がないけれど、それが恋愛としての&ldquo;好き&rdquo;なのかと言われたら本当に分からない。<br />
だからと言ってかおるに他に好きな人が居たら&hellip;なんて思うと気分は良くない。でもそれは妹のように思っているからなのかもしれないし&hellip;。そもそも、今まで女の子を好きになったことがない千晴は、恋愛感情というものが良く分からなかった。<br />
ひとつだけ分かるのは、いつか自分が好きな人が出来るとしたら、きっとかおるのような子なのだろうということだ。<br />
でも、今はまだそれを考えることをしたくない。答えを出したくない。<br />
自分の考えを出来るだけ晶子に悟られないように、千晴は決して得意ではないけれど笑顔を作った。<br />
&nbsp;<br />
<br />
「とにかく、かおるちゃんは、妹みたいな感じだよ。龍と中條さんだって、同じような感じでしょ？」<br />
&nbsp;<br />
<br />
誤魔化すつもりで早口で言った言葉に、晶子が少し驚いて目を見開いた。ずっと握られたまま忘れていた右手首が、やっと開放され千晴は小さく息を吐いた。<br />
&nbsp;<br />
<br />
「そうね。それもあるけど、龍は彼氏だから、やっぱりこういう時は頼りたいって思うのよね。あんな奴でも。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「え？」<br />
<br />
&nbsp;<br />
「やっぱり、ハルにも言ってないんだ。実はね、わたしと龍、付き合ってるの。」<br />
<br />
&nbsp;<br />
はにかんで微笑む晶子は、これまで見た中で一番女の子らしくいつもの大人びた彼女とは少し違う印象を受けた。<br />
<br />
---しかしそんなことよりも、千晴はたった今晶子が言った言葉をすぐに理解出来ずに居た。<br />
<br />
龍之介と晶子が、付き合っている？幼馴染じゃなくて？彼氏彼女？<br />
<br />
え、ちょっと待って。そんなはずないだろう？だって、天馬はずっと晶子のことを好きだった。これは龍之介も知っていたはずだ。それなのにどうして&hellip;。<br />
&nbsp;<br />
<br />
<br />
「中條さん、それっていつから&hellip;？」<br />
<br />
&nbsp;<br />
「中学２年の秋くらい&hellip;かな。龍にはずっと恥ずかしいから言うなって口止めされてたし、わたしも別にわざわざ言うことじゃないって思ってたから。でもこんな状況だし、もう隠す必要もないでしょう？」<br />
<br />
&nbsp;<br />
それはそうだけど！と大声で叫びたかった。<br />
中学２年の秋、というと天馬が晶子を好きだと千晴達に打ち明けた時よりもずっと前だ。<br />
きっと龍之介は、頬を赤くして、照れるのを必死に隠して、プライドの高い天馬が自分達に明かしてくれた想いの前に、本当のことを言えなくなってしまったのだ。<br />
それでも、あの時龍之介は間違いなく「応援するよ」と天馬に言った。天馬に、後戻り出来ない嘘を吐いた。<br />
龍之介は、ずっと辛かったに違いない。天馬のする晶子の話を、龍之介はずっと笑って聞いていた。龍<br />
之介は報われない天馬の恋を笑っていた訳ではないだろう。自分の嘘にずっと胸を痛めていたと思う。<br />
自分は、龍之介の思いに気がつくことが出来なかった。<br />
&nbsp;<br />
<br />
知らなかった。こんなに近くに、亀裂があったなんて。<br />
&nbsp;<br />
<br />
とにかく、今はかおると、そして天馬を探さなければ。<br />
天馬がこの事実を変な風に知る前に探し出して、上手く伝えなければ。<br />
これ以上、亀裂が大きくなる前に、２人の間に居ながらなにも気づくことが出来なかった自分がなんとかしなければ。<br />
&nbsp;<br />
<br />
「ごめん、中條さん。やっぱり俺、かおるちゃんと天ちゃんを探しに行くよ。龍と先に合流して？」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「どうしたの、急に&hellip;」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「いや、やっぱりさ、バラバラにみんなを探して、後で落ち合った方が良いと思うんだ。だから、半日後に体育館で集まろう。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「うん&hellip;。ハルがその方が良いって言うなら。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「ありがとう。あと、さ。さっきの話だけど、もしかおるちゃんとか、成瀬さんとか&hellip;天ちゃんに会ったら、まだ内緒にしておいて欲しいんだ。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「それって、わたしと龍が付き合ってるってこと？どうして？」<br />
&nbsp;<br />
<br />
「理由は、今は言えない。どうしても知りたいなら、龍に聞いてみて。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
晶子は腑に落ちない表情だったけれど、千晴の先ほどとは違う様子に渋々といった形で頷いた。<br />
荷物をまとめ、前よりも重い足取りでドアをくぐろうとした所振り返ると、晶子と目が合った。<br />
切れ長の凛とした瞳。この、暗い地獄のような場所でも背筋を伸ばして真っ直ぐと立っている。<br />
天馬も、そして龍之介も、彼女のそういう所を好きになったのかも知れない。<br />
&nbsp;<br />
<br />
<br />
「ハル、後で必ず会いましょう。必ず。」<br />
&nbsp;<br />
<br />
<br />
晶子の声はどこか震えているような気がして。<br />
みんなが悩みもなく笑って過ごせる仲良しクラスなんて、所詮幻想だったのだ。<br />
俺はそれに、気がついてしまった。<br />
過ぎった考えを振り切るかのように、千晴は走り出した。<br />
&nbsp;<br />
&nbsp;<br />
<br />
<br />
<br />
【残り６人】<br />
&nbsp;<br />
&nbsp;<br />
]]>
    </description>
    <category>本編</category>
    <link>https://rokudourinne.3rin.net/%E6%9C%AC%E7%B7%A8/%E8%A9%A6%E5%90%88%E9%96%8B%E5%A7%8B%EF%BD%9E%E7%A2%BA%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8B%E6%AD%AA%E3%81%BF%EF%BD%9E</link>
    <pubDate>Sat, 31 Aug 2013 16:27:11 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">rokudourinne.3rin.net://entry/7</guid>
  </item>
    <item>
    <title>試合開始～戦場へ～</title>
    <description>
    <![CDATA[<span style="color: #808080;">あたしたちはみんな仲良し。</span><br />
<br />
<span style="color: #808080;" color="#808080">プログラムなんて、成り立つはずがない。</span><br />
<br />
◆<br />
<br />
「君たちは、この大東亜共和国の名誉ある第68番プログラムに選ばれた。」<br />
低く美しい声で紡がれた信じられない言葉に、<span style="color: #ee82ee;">櫻田かおる（女子１番）</span>は言葉を失った。<br />
かおるだけではなく、全員が信じられないといった様子で、教壇に立つ紳士風の男を見上げていた。<br />
<br />
第68番プログラム――大東亜共和国に住む中学3年生で、この言葉を知らない人などいない。<br />
全国の中学校から任意に選出した3年生の学級内で、生徒同士を戦わせ、生き残った一人のみが、家に帰ることができる、わが大東亜共和国専守防衛陸軍が防衛上の必要から行っている戦闘シミュレーション――小学4年生の社会の教科書にも出てくるし、ローカルニュースで年に一度くらいは目にするものだ。<br />
傷だらけ血塗れの少年少女が両脇を軍人らしき人たちに抱えられながらカメラの方をじっと見つめ、なぜか総じて笑みを浮かべる――ニュースで流れるホラー映画顔負けの不気味な映像は、かおるの脳裏にもしっかりと焼きつき、忘れようと思っても忘れられない。<br />
<br />
「い&hellip;いやぁ&hellip;&hellip;冗談っしょ？うちみたいなさ、6人しかいないちっちゃいクラスでそんなの&hellip;なぁ？」<br />
<br />
<span style="color: #3399ff;">神尾龍之介（男子３番）</span>が引き攣った声を上げ、クラスメイトたちを見回した。「誰か、冗談だって言ってくれ」、龍之介の目が訴えてきたけれど、かおるは視線をそらし、俯くことしかできなかった。<br />
<br />
「ごめんなあ、神尾ーこれ、冗談ちゃうねん。でもこんな空気の中頑張って発言した神尾の勇気に免じて一コケシやろ！」<br />
<br />
チューリップハットに花柄のシャツを着た若い男はヘラッと笑い、龍之介の机の上にコケシを置いた。<br />
龍之介はコケシを凝視し、視線をチューリップハット男の顔へと上げ――笑顔を向けられて慌てて視線を逸らしていた。<br />
龍之介の背中越しに見えるコケシの顔が不気味に見えて、かおるはぶるっと体を震わせた。<br />
<br />
「話を戻そう。君たちは第68番プログラムに選ばれた。つまり、これから、君たちには殺し合いをしてもらう」<br />
<br />
&rdquo;殺し合い&rdquo;――その言葉が、ずしんとかおるに圧し掛かる。<br />
<br />
そんな、たった6人の仲良し同士なのに&hellip;そうだよ、できるわけないよ。<br />
みんな、いい子だもん、そんな酷いこと、できるわけない&hellip;よね？<br />
<br />
かおるは隣に座っている<span style="color: #3399ff;">大塚千晴（男子１番）</span>へと目を遣った。<br />
椅子に深く腰掛け、じっと前に座る龍之介の広い背中を見つめていた千晴だったが、かおるの視線に気づいたのかかおるの方へ首を傾け、ふっと笑みを浮かべた。<br />
大丈夫だよ、かおるちゃん。そう言ってくれているみたいで、少しだけ、心が落ち着いた気がした。<br />
<br />
「プログラムの間、私たちが君たちの担当となる。私は、担任の、<span style="color: #800080;">榊原五郎（さかきばら・ごろう）</span>だ。隣の２人は、私の補佐を行っていただく先生方で、右側が<span style="color: #800080;">虎崎れんげ（とらさき・れんげ）先生</span>、左側が<span style="color: #800080;">渡部ヲサム（わたなべ・をさむ）先生</span>だ」<br />
<br />
榊原と名乗るスーツ姿の男は、まるで指揮者がタクトを振るような優雅な動きで黒板に名前を書いた。<br />
ピンクジャージの気が強そうな中年女性は虎崎、チューリップハット男が渡部だそうだ。<br />
<br />
「ちょっと待ってください」<br />
<br />
かおるの前の席に座る<span style="color: #ee82ee;">中條晶子（女子２番）</span>が声を上げた。<br />
かおるは、ぴっちりと綺麗に結い上げられた晶子のお団子頭に視線を向けた。<br />
<br />
「私たちの担任は、藤くん&hellip;藤丸先生です。藤丸先生は、私たちがプログラムに参加することを認めるはずがありません」<br />
<br />
凛とした声、はっきりとした口調。いつもと変わらない、委員長であるかおるよりもずっとしっかりとした口調で、晶子が述べた。<br />
<br />
そう、かおるたちの担任は<span style="color: #800080;">藤丸英一先生</span>。22歳の新任の先生で、クラスのみんなから「藤くん」と慕われ、藤丸も全員のことをファーストネームで呼ぶ。休み時間に一緒に遊ぶこともあれば、放課後に勉強に付き合ってくれることもあり、生徒たちにラーメンを奢ってくれることもある、先生と言うよりもお兄さんのような存在。<br />
そんな藤丸が、かおるたちのプログラム参加を認めるはずがない。<br />
<br />
「中條、次からは質問の際は挙手をするように。<br />
確かに藤丸先生は君たちがプログラムに参加することを反対しておられた。そのため、少々手荒な手段を取らせてもらった」<br />
<br />
榊原は渡部に視線を投げ、ぴしっと親指以外の指を前方に突き出した。渡部は頷いて一度廊下に出ると、ずるずると何かを引きずりながら戻ってきた。<br />
<br />
「いやあああああッ！！！藤くん、藤くんッ！！！」<br />
<br />
かおるの後ろ、<span style="color: #ee82ee;">成瀬萌（女子３番）</span>が金切り声を上げた。<br />
元々色白だが、むしろ顔面蒼白となった萌がふらりと椅子から崩れ落ちたが、隣の席の<span style="color: #3399ff;">柏谷天馬（男子２番）</span>が咄嗟に両手を伸ばして受け止めたので、床に体を打ち付けることはなかった。<br />
萌の華奢な身体を抱き止めた天馬の表情は引きつっていた。そして、それは、天馬だけではなく全員だったのだが。<br />
それもそのはず、渡部が引きずり椅子に座らせたのは、かおるたちの担任の藤丸だった。<br />
ただし、その姿は、見慣れたものではなかった。青いＴシャツは所々黒く変色し、Ｔシャツから生えた筋肉質な腕にはいくつもの痣ができ、やや幼いけれども整ったパーツが並べられた顔は見る影もない程に腫れ上がり、外はねのクセがある赤みのある茶髪はぼさぼさになっていた。小さく肩を上下させているので息はあるようだが、意識があるのかどうかはわからない。<br />
<br />
「藤くんッ！！！」<br />
<br />
机を倒して駆け寄ろうとした龍之介だったが、虎崎の蹴りを鳩尾に食らって吹っ飛び、千晴の机へ突っ込んだ。<br />
<br />
「勝手に席を立つんじゃないよ！！今度やったら、こんなモンじゃ済まないからね！！」<br />
<br />
龍之介のもとに駆け寄ろうと腰を上げていた晶子が、虎崎の怒声に身を硬直させた。<br />
かおるは身が竦んで動くことすらできず、ただ苦しそうに咳込む龍之介と、「大丈夫か」と声を掛けて背中を摩る千晴を見ていることしかできなかった。<br />
<br />
「静粛に。それでは、藤丸先生もいらしたところで、プログラムのルールについて説明を始める。皆の命に関わることなので、注意して聞くように。神尾、柏谷、成瀬、席に着け」<br />
<br />
千晴の机に体を預けて咳込んでいた龍之介が、ふらふらと立ち上がり、自分で倒した机を元に戻して着席した。痛みと恐怖と怒りが綯い交ぜになったような、普段の明るく元気な姿からは想像できないような表情を浮かべていた。<br />
天馬は萌を座らせた後無言で席に戻ったが、その体はずっと震えていた。<br />
<br />
龍之介と天馬と萌が席に着く様を確認すると、榊原は黒板の脇に丸めて立て掛けられていた模造紙を開き、黒板に磁石で貼り付けた。縦横4マスずつに区切られた地図のようだった。榊原は咳払いを一つし、話し始めた。<br />
<br />
「ルールについては皆知っていると思うが、最後の1人になるまで殺し合いをしてもらう。基本的にここでは何をしてもらっても構わないし、誰かと手を組むことも、裏切ることも、また単独行動をするのも自由だ。<br />
黒板に注目してほしい。これは、皆が戦う会場、青春海立運動公園（せいしゅんうみだちうんどうこうえん）の地図だ。端には柵を作ってあるので、この地図に書かれていない場所へは行くことができないので注意するように。ちなみに、今皆がいるのは、B-3エリアにある公園の管理事務所だ」<br />
<br />
<a href="//rokudourinne.3rin.net/File/rokudoumap.gif" target="_blank"><img style="border-width: 0px; border-style: solid; width: 150px; height: 150px; float: left;" alt="rokudoumap.gif" src="//rokudourinne.3rin.net/Img/1375624408/" /></a><br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
青春海立運動公園――かおるは、何度か訪れたことがあった。春は桜、秋は紅葉が美しいことで有名な場所であり、家族と来たこともあれば、美術部仲間の千晴とスケッチに来たこともあった。そんな場所で、プログラムを行うだなんて。<br />
<br />
「プログラム中、誰かが死亡する毎にこちらから放送を行う。その時に、禁止エリアというものを発表する。禁止エリアとは、立ち入りを禁止するエリアのことだ。<br />
それに関係するのが皆に装着してもらっている首輪だが、これは皆の居場所や生死をモニターするものである。禁止エリアに立ち入った場合、こちらから首輪に電波を送る。電波を受信した首輪は、1分間警告音を発した後爆発するので、禁止エリアには立ち入らないように。また、警告音が鳴った場合には、1分以内に禁止エリア外に出るように。<br />
それと、無理に引っ張っても爆発するからあまり触らないように、櫻田」<br />
<br />
首元に手をやっていたかおるは、榊原から名指しで注意されて慌てて手を膝の上に戻した。それにしても、首輪が爆発だなんて、おかしいにも程がある。今、かおるたちは、首に爆弾を着けて座っているということになるのだから。<br />
<br />
「それから、出発の際には、こちらから荷物を渡す。水や食料、会場の地図と磁石、懐中電灯と時計、それから武器を入れてある。これはランダムで渡すので、武器を選ぶことはできない」<br />
<br />
渡部が再び廊下に出、今度は6つのデイパックを両腕に提げて戻って来た。相当の重さがあるのだろう、それらを床に置いた時にはその振動が足元に伝わってきた。<br />
<br />
「説明は以上だ、質問はあるか」<br />
<br />
かおるは俯いた。質問なんて、「どうして自分たちがプログラムに参加しなければならないのか」くらいしか思い浮かばないが、そんなことを言えば藤丸や龍之介のように理不尽な暴力を振るわれるに決まっている。<br />
ちらっと隣を盗み見ると、千晴も同じように俯いていた。クラス1騒がしい龍之介も、しっかり者の晶子も、何も言わなかった。<br />
<br />
「っく&hellip;ひっく&hellip;&hellip;いや&hellip;怖いよぅ&hellip;」<br />
<br />
かおるの後ろで、萌が消え入りそうな声で嗚咽交じりに呟いた。その悲痛な声に、かおるの双眸からもぼろぼろと涙が零れ落ちた。怖い、怖い、怖くてたまらない。<br />
<br />
「泣き事言ってんじゃないよ！！世の中、嫌なことを避けて進めるようにはできてないんだよッ！！」<br />
<br />
虎崎の怒号が飛び、かおるはびくっと体を震わせた。萌の嗚咽が一瞬止まったが、先程よりもより大きな声で泣きじゃくり始めた。<br />
そのことに苛立ったらしい虎崎が、大きな足音を立てて萌の横に立ち、萌のふんわりとした栗色の髪を鷲掴んだ。萌が「いやぁッ！！」と甲高い悲鳴を上げた。<br />
<br />
「や、やめろよ、成瀬を離せッ！！<br />
泣いたって、怖がったって&hellip;そんなの当たり前だ！！今から殺し合えとか言われて平気なヤツ、いるわけないだろ！！成瀬の反応ってすっげー普通じゃん、声にしてなくたって、俺ら全員絶対同じこと思ってるし！！！」<br />
<br />
天馬が叫んだ（恐怖からか、声は引き攣り時に裏返っていたけれど）。<br />
虎崎は萌から手を離し、今度は天馬の隣へと移動し、拳を振り上げた。「天ちゃん！！」とあちこちから声が上がり、天馬は目をぎゅっと瞑った――が、天馬が先の龍之介のように吹っ飛ぶことはなかった。拳が当たる寸前で、榊原から制止の声が掛かったのだ。<br />
<br />
「まあまあ虎崎先生、落ち着いてください。柏谷の言う通りですよ」<br />
<br />
「&hellip;まあ、そうだねぇ」<br />
<br />
虎崎は納得したように何度か頷くと、教室の前方へと戻って行った。<br />
萌が席を立って天馬に泣きついた時には立ち止まって振り返りその様子を睨んでいたが、「ほれ、さっさと席に戻りな」というお咎めの言葉以外は何もなく、皆がほっと溜息を吐いた。<br />
<br />
「それでは、これから1人ずつ順番に出発してもらう。なお、足元に置いてある各自の私物は持って行っても構わない。<br />
出発した者が本部のあるB-3エリアを出た時点で次の者が出発し、最後の者が出発してから20分後にこのエリアは禁止エリアに指定されるので、早くここから立ち去るように。あまりに長いこと居座っていると後が閊えてしまうから、その場合には制裁を行うこともありうるので気を付けること」<br />
<br />
榊原はスーツの内ポケットから封筒を取り出すと、鋏で封を切った。中から1枚の紙を出した。<br />
<br />
「それでは、最初の出発者を発表する。<br />
<br />
男子１番・大塚千晴、逝ってよし！」<br />
<br />
全員の視線が、千晴に集まった。千晴はぽかんとしていたが、虎崎の「ほれほれ！！」と急かす怒号に押されるように立ち上がった。足元の鞄を肩に掛け、ゆっくりと教卓の前に立った。<br />
<br />
「みんなのご家族にはちゃんと報告してあるから、存分に戦ってな！ほんなら大塚、先生の言う言葉を繰り返してなー！<br />
私たちは殺し合いをする、はい！」<br />
<br />
渡部の口から飛び出したとんでもない言葉に、千晴は「&hellip;え？」と茫然とした声を漏らした。<br />
<br />
「ほらほら、ちゃんと言わなコケシで殴るで？私たちは殺し合いをする、はい！」<br />
<br />
「わ&hellip;たしたち、は、殺し合いを、する&hellip;」<br />
<br />
「よっしゃよくできました、ほんなら次、殺らなきゃ殺られる、はい！」<br />
<br />
「やらなきゃ&hellip;やられる&hellip;」<br />
<br />
まるで洗脳しているみたいだ、かおるは思った。<br />
<br />
「&hellip;千晴&hellip;&hellip;ごめんな&hellip;&hellip;」<br />
<br />
不意に、小さな声が聞こえた。掠れて虚ろだけれど、藤丸の声だった。<br />
千晴が藤丸の方に顔を向けた。<br />
<br />
「藤くんのせいじゃないよ&hellip;&hellip;藤くんは、何も悪くない&hellip;でしょ？」<br />
<br />
千晴の静かで優しい声。相手を思いやり労わる、聞き慣れた声。<br />
千晴はあんな上辺だけの言葉で洗脳なんかされやしない、いつもの穏やかで優しい千晴のままだ。<br />
<br />
千晴は渡部からデイパックを受け取ると、クラスメイトたちの方へ向き直った。一人ひとりの顔を順番に見遣り、小さく笑んだ。<br />
<br />
「俺は、みんなを信じてる&hellip;だから、みんなも俺を信じて」<br />
<br />
千晴はそう言うと、まるで毎日の下校時のような足取りで教室を出て行った。<br />
<br />
千晴の残した言葉は、ほんの僅かだけれど教室内に満ちた重苦しい空気を晴らした――少なくともかおるはそう感じた。<br />
<br />
そう、きっと大丈夫。誰も、実際に殺し合いなんてするわけがないんだ。<br />
<br />
【残り６人】]]>
    </description>
    <category>本編</category>
    <link>https://rokudourinne.3rin.net/%E6%9C%AC%E7%B7%A8/%E8%A9%A6%E5%90%88%E9%96%8B%E5%A7%8B%EF%BD%9E%E6%88%A6%E5%A0%B4%E3%81%B8%EF%BD%9E</link>
    <pubDate>Sun, 04 Aug 2013 14:09:31 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">rokudourinne.3rin.net://entry/6</guid>
  </item>
    <item>
    <title>試合開始～日常、暗転～</title>
    <description>
    <![CDATA[<div id="yiv1971676344">
	<div>
		<br />
		<font style="color: #808080">夢だって、誰か言って。</font><br />
		<br />
		◆<br />
		<br />
		目を覚ました。<font style="color: #dda0dd">中條晶子（女子2番）</font>は未だに重い瞼を無理やり持ち上げて辺りを見回す。<br />
		どうやら、ここは教室のようだった。薄暗く部屋全体の様子はよく見えないが、教室だということは綺麗に並べられた机や、大きな黒板から、教室と呼ばざるをえない空間にいることは確かだった。<br />
		でも、わたし達はさっきまでバスに乗っていたのにどうして&hellip;？</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		隣を見るといつも通り幼なじみの<font style="color: #0066ff">神尾龍之介（男子３番）</font>が机に突っ伏したまま気持ち良さそうに眠っているのが見え、晶子はふっときつ目の切れ長の瞳を緩めた。<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「龍」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		小さく龍之介の名前を呼んだが、反応はない。</div>
	<div>
		ふうと小さくため息をつくと、隣の龍之介ではなく意外なところから声が帰ってきた。<br />
		晶子がそちらを振り返ると、<font style="color: #dda0dd">成瀬萌（女子３番）</font>が不機嫌だと言わんばかりに眉を顰め（ほんとにこの子は、男の前と女の前では態度がころっと変わるんだから。男の前ではこんな顔、絶対しないくせに。）晶子と目が合うなりゆっくりと気だるげに立ち上がった。<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「ちょっとー晶子ちゃん、これどうゆうこと？萌達、どうしてこんなとこにいるわけ？」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「わたしもわからなくて。とりあえずみんなを起こさない？」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「もうー！藤くんのドッキリとかだったら、萌、許さないんだから！」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		萌の言葉に晶子は龍之介の身体を揺すりながら、担任の藤丸英二のことを思った。<br />
		若くてノリが良く、それでいていたずら好きの彼のこと。萌が言うようにこれが私達を驚かすための仕掛けだということも考えられる。でも、藤くんがそれだけのためにクラス全員をこんなところに運んで、薄暗い教室に眠らせて？<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「あれ&hellip;あっこ？」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「龍、やっと起きたの？」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		手を延ばして、龍之介の髪に付いた埃を払う。<br />
		ごめんと彼が小さな声で言うと同時に顔を上げ&hellip;その形の良い瞳を丸くした。龍之介の視線は、晶子の首に。</div>
	<div>
		そこには、龍之介にもらったネックレスが輝いているはずだ。それなのにみるみる強張っていく龍之介の表情に晶子は不安を覚え、彼の視線の先、自分の首元に手を当てた。そして『それ』に気がついた。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「あっこ、首輪&hellip;」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「なに、これ？」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		自分の首に巻きつけられた金属の存在を認識した瞬間、上手く息ができない錯覚に陥る。</div>
	<div>
		ネックレスの細いチェーンが、それに当たって軽い音がする。</div>
	<div>
		不意に辺りを見回すと、後ろの席の<font style="color: #dda0dd">櫻田かおる（女子１番）</font>が、今にも泣きそうな表情で晶子を見上げていた。<br />
		そしてその細い首を見て晶子は愕然とした。やっぱり、間違いない。晶子とかおるだけではない。<br />
		龍之介も、萌にも。<br />
		その萌に起こされて眉間に皺を寄せている<font style="color: #0066ff">柏谷天馬（男子１番）</font>にも、いまだに眠そうに椅子にもたれかかっている<font style="color: #0066ff">大塚千晴（男子２番）</font>にも。<br />
		クラス全員、誰一人例外などなく首輪が光っていたのだ。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		しん、と教室が静まり返る。</div>
	<div>
		なんなんだ、これは。<br />
		晶子は震える手で制服のポケットから携帯電話を取り出し、それを開いてみると時刻は夜の22時を回っていた。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「藤くんに、電話してみる？」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「だめ、圏外みたい。それにもう10時回ってる。」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「えぇ？そんな夜なの？そんなのもうとっくに家に帰ってる時間だし、ほんとにどうなっちゃってるの？」</div>
	<div>
		<br />
		「かおるちゃんも、何も聞いてないよね？」</div>
	<div>
		<br />
		「うん&hellip;いつもは何かあったら委員長の私に連絡があるんだけど、今回はなにも&hellip;。」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		かおるが申し訳なさそうに瞳を伏せると、萌が苛立ったように眉を寄せた。<br />
		そんな萌の様子に、かおるを庇うように口を開いたのは千晴だった。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「とりあえず、さ。ずっとこうしてても仕方ないし、人を呼んでこようよ。」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		まるで慣れ親しんだ教室のような空間は、確かにとても居心地が悪かった。似ているけど、明らかに違う。<br />
		窓もなく、殺伐とした部屋は、黒板と机とテレビがあるだけで他には何もない。</div>
	<div>
		千晴の言葉にうなづいて龍之介が立ち上がり、恐る恐るドアに手をかけた。<br />
		<br />
		しかし、ドアが空く気配はない。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「龍&hellip;？」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「開かないんだ、ドアが。」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「ちょっとぉ、龍之介くん、冗談やめて？」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「成瀬、どいて。」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		某然と立ち尽くす晶子と萌の間をすり抜けて、天馬が龍之介の横からドアに手を伸ばす。<br />
		しかし、2人の力を合わせてもドアには鍵がかかっているのか、龍之介の言うとおりドアが空く気配はなかった。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		しん、という音が聞こえた気がした。<br />
		再び6人の間を沈黙が包む。</div>
	<div>
		どこからかすすり泣くような声が聞こえ晶子が振り返ると、かおるの瞳から恐怖からか涙が零れ落ちるのが見えた。</div>
	<div>
		それを見た天馬が呆れたように、しかしどこか苛立ったように音を立て席に座る。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「もう、天ちゃんってばー！短気なんだからぁ。」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		天馬を茶化すように、萌が声をかけるとうるさいよ、と天馬の声が聞こえた。<br />
		萌はくるんとした愛らしい瞳を一段と大きく開くと、肩をすくめて天馬の隣の席についた。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「かおるちゃん、大丈夫？」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		晶子がかおるの顔を覗き込むと、かおるは急いで涙を制服の袖で拭って頷いた。</div>
	<div>
		赤い縁の眼鏡の奥、瞳が真っ赤になっている。もともと慰めるという行為が苦手な晶子は、かおるにかける言葉を頭の中で必死に探していた。</div>
	<div>
		<br />
		<br />
		その時だった。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		<br />
		ドアの向こうから、コツコツと足音が聞こえ始めた。うな垂れていた龍之介もはっとして顔を上げる。</div>
	<div>
		龍之介が何かを察したのかドアから離れ、晶子の方を見た。</div>
	<div>
		目が合う。こんなに困った龍之介の顔は久しぶりに見る。</div>
	<div>
		最近は男らしくなって、だいぶ頼もしくなったって思ってたのにまだそんな顔してーーー。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「誰か、来る。ひとりじゃない&hellip;何人か&hellip;。」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		呟くように千晴が言った次の瞬間、音を立ててドアが開いた。</div>
	<div>
		側にいる龍之介を見下ろすように立つ、スーツの男。<br />
		ホストみたいな真っ白なスーツに、かっちりとセットされた髪。キリッとした眉の下の、冷たい瞳。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「何をしている。席に着け。」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		氷のような視線に射抜かれて、龍之介が凍りついたように立ち尽くしていた。<br />
		千晴も、動けずにただスーツの男を見つめている。</div>
	<div>
		晶子もこの状況を何ひとつ理解することが出来ずに、隣のかおるが自分の袖を引くのに、意識を保っていた。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「まぁまぁ、五郎ちゃん、そんな風に言わんといて？始めやし、状況が飲み込めんのとちゃう？」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「ヲサムの言う通りだよ！ほれ！ぼうっと突っ立ってないで席に着きな！」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		「いや、虎崎さん、それ五郎ちゃんと一緒のこと言ってるやん！」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		この空気を理解してか、そうでないのかわからないが、スーツの男の後ろから、チューリップハットに花柄のシャツを纏った若い男（ヘラヘラして、スーツの男とはだいぶ雰囲気が違う）と、ピンク色の派手なジャージを着たおさげ髪の年配の女性が明るいテンションで現れた。</div>
	<div>
		どちらの指示も、結局は席に着けということらしい。<br />
		晶子はかおるを席に着くように促すと、龍之介に駆け寄った。</div>
	<div>
		龍之介は未だドアの側から動けずに、スーツの男を睨みつけている。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「龍！」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		彼のシャツを引っ張り、どうにか冷静さを取り戻して欲しいと冷たい手に触れると、龍之介がはっとしたように晶子に目を向けた。</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「あっこ&hellip;」</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		弱々しい声で名前を呼ばれ、それに頷くと龍之介は踵を返し席へと戻って行った。<br />
		それを追いかけるように晶子も元いた席に座り、こうして6人全員が普段の教室と同じように並べられた机に着くこととなった。</div>
	<div>
		それを見てスーツの男は満足気に目を細めると、そこが定位置だと言わんばかりに教壇の前で足を止めた。<br />
		チューリップハットの男と、ジャージの女も隣に付く。</div>
	<div>
		教室のドアからは他にもゾロゾロと迷彩服を着た軍人らしき人が何人か入って、晶子たちの周りを取り囲んだ。</div>
	<div>
		見間違いでなければ、彼らの手には映画でみるようなライフルが。<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		なにこれ。一体、何だっていうの。<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		晶子の背中を、冷や汗が流れる。初めて感じる、潰されてしまいそうな重い空気。<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「諸君、おめでとう。」<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		スーツの男が口を開いた。<br />
		地鳴りのような、低く、それでいて氷のように綺麗な声だった。</div>
	<div>
		晶子は顔を上げる。<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		&nbsp;</div>
	<div>
		「君たちは、この大東亜共和国の名誉ある第68番プログラムに選ばれた。」</div>
	<div>
		<br />
		&nbsp;</div>
	<div>
		逝ってよし！</div>
	<div>
		そう言って、スーツの男が親指以外の4本の指をビシッと前に突き出した。<br />
		プログラム&hellip;？誰かが呟く。</div>
	<div>
		晶子は某然と、ただその美しい指先を見つめていた。<br />
		<br />
		<br />
		<br />
		<br />
		<br />
		【残り６人】<br />
		&nbsp;</div>
</div>
]]>
    </description>
    <category>本編</category>
    <link>https://rokudourinne.3rin.net/%E6%9C%AC%E7%B7%A8/%E8%A9%A6%E5%90%88%E9%96%8B%E5%A7%8B%EF%BD%9E%E6%97%A5%E5%B8%B8%E3%80%81%E6%9A%97%E8%BB%A2%EF%BD%9E</link>
    <pubDate>Wed, 03 Apr 2013 14:49:41 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">rokudourinne.3rin.net://entry/5</guid>
  </item>
    <item>
    <title>試合開始～平穏の幕引き～</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<p>
	<font color="#808080"><font size="-1">卒業まであと半年。</font></font><br />
	<font color="#333333"><font color="#808080"><font size="-1">頭ではわかっていても、まだ現実感がない。<br />
	みんなで一緒に勉強して遊んで馬鹿なことをして、今日も明日も明後日も過ごす。<br />
	何の疑問もなく、そう思っていた。</font></font></font><br />
	<br />
	<br />
	<br />
	<font size="-1">◆<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	夏に比べれば少し柔らかくなった朝の日差し、思えば少し前より色褪せた気がする黄緑の葉を付けた木々、爽やかに感じられる風に靡く稲穂と朝早くから収穫の準備を始める農家の人々――毎日見ているとその変化には気付かないのだが、ふと意識すれば季節の変化を感じる通学路。<br />
	<font color="#3366ff">柏谷天馬（男子２番）</font>は周りの景色を視界に入れながら、舗装が完全ではない道を自転車で走る。<br />
	校区の広い古山中学校に通う生徒の中でも、天馬は特に遠いところから通学している。<br />
	晴れの日や曇りの日はもちろん、雨でも風でも雪でも、自転車を漕いできた。<br />
	この道を走るのもあと半年かと思うと、少し寂しい気持ちになる。<br />
	<br />
	天馬は走りながら、腕時計のデジタル数字に目を遣った。<br />
	いつもより早めに出たので、今日は早く学校に着きそうだ。<br />
	自転車の前かごに入れた通学鞄は、その形を保てないほどにへしゃげている。<br />
	今日は校外学習で、持ち物が少ないのだ。<br />
	<br />
	&hellip;なんか、校外学習にテンション上げて早く学校行くみたいじゃん、俺。<br />
	うわ、ダッサ。<br />
	<br />
	天馬は自転車を降りた。<br />
	ここから歩けば、並の時間に着くだろう。<br />
	クラスで１番学校まで距離があるのに１番に着くなんて、恥ずかしくてたまらない。<br />
	皆にからかわれるに決まっている。<br />
	<font color="#3366ff">神尾龍之介（男子３番）</font>あたりが、『天ちゃんってば、そんなに遠足が楽しみだったんだ！　かっわいい！』とか言ってくるのが容易に想像できる。<br />
	<br />
	自転車を押しながら、天馬は自分の手に視線を落とした。<br />
	入学する前に、親に『男の子は身長が一気に伸びるから大きめの制服を買わなきゃね』と言われてぶかぶかの制服を買ったのに、身長はほんの少ししか伸びなかったため、未だに制服は天馬の小柄な体には合わない大きさで、手が袖でほとんど隠れてしまっている。<br />
	周りの男子はすくすくと成長していくのに、取り残されるのがとても悔しかった。<br />
	女子にまで『天ちゃんは小さくて可愛いね』と言われる始末だ。<br />
	少しでも男らしくなりたいと思って口調を意識してみたり髪型をいじってみたりしているけれど、ようやく160ｃｍに到達したばかりの身長と幼い顔立ちが邪魔をする。<br />
	この容姿がコンプレックスで、好きな女の子に好きと言うこともできない。<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	「天ちゃん、おはよっ」<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	不意に声を掛けられ、天馬はびくっと体を震わせて振り返った。<br />
	手を振りながら小走りで駆けてくるのは、クラスメイトの１人である<font color="#ff99cc">中條晶子（女子２番）</font>だった。<br />
	龍之介の幼馴染で、とても大人びていてクラス一のしっかり者――そして、天馬がいつの間にか芽生えた想いを寄せてきた人だ。<br />
	<br />
	「はよ」<br />
	<br />
	天馬はふいっと顔を背け、短い挨拶をした。<br />
	朝から好きな人に会えた気恥ずかしさと、クールな態度が男らしいとする自己分析の結果、このような態度しか取れないのだ。<br />
	好きな人を前にはしゃぐなんてかっこ悪い。<br />
	<br />
	「中條が１人って珍しい。<br />
	　龍はまさか休み？」<br />
	<br />
	「まさか。<br />
	　寝坊よ寝坊、呆れたから先に来たの」<br />
	<br />
	「ふーん」<br />
	<br />
	晶子と龍之介は家が近いこともあり、いつも一緒に登校している。<br />
	幼馴染だし、最近は物騒な事件もニュースで多く聞くので不自然なことではないと思う。<br />
	龍之介に想いを寄せている<font color="#ff99cc">成瀬萌（女子３番）</font>にしてみれば、中学生にもなって幼馴染とはいえ男女が一緒に登校するなんて怪しすぎる、ということらしいが、少女漫画の読み過ぎだろう。<br />
	２人が恋仲ということは聞いたことがない。<br />
	それに、以前天馬が晶子に想いを寄せていることを告げた時に、龍之介は『応援するよ』と言ってくれた。<br />
	だから、そんなことはありえないのだ。<br />
	<br />
	天馬は隣を歩く晶子をちらりと見て、溜息を吐いた。<br />
	晶子のおだんご頭の分を差し引いても、晶子は天馬よりも背が高い。<br />
	仮に恋仲になったとして、並んで歩いた時に男である自分の方が背が低いなんて嫌過ぎる。<br />
	だから、天馬は晶子にその想いを告げることができなかった。<br />
	<br />
	自分の身長が晶子よりも高くなったらきっと――そう思い続けてきた。<br />
	しかし、こんな風に当たり前のように毎日会うことができるのもあと半年。<br />
	中学を卒業したら、バラバラの人生を歩み出す。<br />
	そうすれば、晶子にとっての自分とは、ただの&ldquo;中学時代の同級生&rdquo;となってしまうのだ。<br />
	中学時代の同級生の誼でちょくちょく会うことなんて、きっとできない。<br />
	タイムリミットは、確実に近付いている。<br />
	<br />
	「&hellip;ちゃん、天ちゃん？」<br />
	<br />
	はっ、と天馬は我に返った。<br />
	横を見ると、晶子が心配そうな表情で天馬を見ていた。<br />
	<br />
	「大丈夫？<br />
	　なんか、ぼーっとしてない？」<br />
	<br />
	「&hellip;別に、考え事してただけだし」<br />
	<br />
	「おやつ持ってきたかなぁ、とか？」<br />
	<br />
	「はぁっ！？<br />
	　違うし、俺そんなガキじゃねぇし！」<br />
	<br />
	「ふふっ、冗談よ、ごめんね」<br />
	<br />
	「&hellip;別に、怒ってねぇし」<br />
	<br />
	ふいっと天馬は顔を背けた。<br />
	ほら。<br />
	身長が低いから、子供っぽいから、まだ晶子には異性としては見てもらえていない。<br />
	もっと背が高くて男らしければ――例えば龍之介のようだったら、迷うことなく告白できていただろうか。<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	２人は学校に着いた。<br />
	天馬は自転車置き場に行かなくてはならないため、晶子とそこで別れた。<br />
	<br />
	校舎の裏側にある自転車置き場に行き、自転車を止める。<br />
	鍵をかけ、鞄を持った。<br />
	<br />
	「あ、天ちゃんおはよ」<br />
	<br />
	声を掛けられ振り返ると、そこには<font color="#3366ff">大塚千晴（男子１番）</font>がいた。<br />
	隣で自転車を置き、ヘッドホンを外していた。<br />
	<br />
	「おはよ、千晴」<br />
	<br />
	千晴はにぃっと笑みを浮かべ、天馬を肘で小突いた。<br />
	<br />
	「見てたよー、さっき中條さんと一緒に来てたでしょ？<br />
	　声掛けるのも野暮かなーって思ってさ、後ろから温かく見守ってたんだ、俺」<br />
	<br />
	天馬はかあっと頬が熱くなるのを感じた。<br />
	その様子に、千晴は可笑しそうに笑う。<br />
	<br />
	「わ、笑うなよっ！」<br />
	<br />
	「ははっ、ごめんごめん！<br />
	　でもさ、冗談じゃなくさ、お似合いだったと思うけどー？<br />
	　告白しちゃえばいいじゃん」<br />
	<br />
	天馬はふいっと顔を背けた。<br />
	<br />
	「やだよ&hellip;身長抜くまで言えねぇもん」<br />
	<br />
	「そっかそっか、そうだっけ。<br />
	　ま、頑張って半年で身長伸ばしなよ、俺も龍も応援してるからね」<br />
	<br />
	千晴はぱんぱんと天馬の背中を叩いた。<br />
	天馬は照れ臭さと嬉しさを隠すように、特に乱れてもいない前髪を何度も指で整えながら、呟いた。<br />
	<br />
	「サンキュ」<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	「あー！<br />
	　ハルちゃん天ちゃん、おはよー！」<br />
	<br />
	マイクロバスの待つ校庭に向かうと、<font color="#ff99cc">櫻田かおる（女子１番）</font>が小さな体で精一杯大きく手を振っていた。<br />
	その手が当たったらしく、隣にいた萌がかおるを叱り、担任の藤丸英一に窘められていた。<br />
	寝坊したという龍之介は走って来たらしく、グラウンドにしゃがみ込み肩で息をしながら汗をタオルで拭っていた。<br />
	晶子はその様子を呆れた表情で見ていた。<br />
	<br />
	「俺ら最後じゃん、早く行こ、天ちゃん」<br />
	<br />
	千晴に急かされ、天馬は千晴の後を追って駆けた。<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	古山中学校は全校生徒の数が少ないので、校外学習は全校生徒全員が同じ場所に行くことになっている。<br />
	そのため、校庭で全学年の生徒が校長からの諸注意を受けた後、バスに乗り込んだ。<br />
	マイクロバスの最後列に腰掛けた龍之介が、隣に停車している少し大型のバスを見遣った。<br />
	<br />
	「今更だけどさぁ、何で俺らだけ違うバスなんだろねー？<br />
	　あと７人くらい入れてくれたらいいのに」<br />
	<br />
	助手席に座る藤丸が振り返り笑った。<br />
	<br />
	「向こうのバスの定員より、微妙に生徒数が多いからね。<br />
	　いいじゃん、龍が騒ぎまくっても、他のクラスの生徒に迷惑かけないで済むんだから」<br />
	<br />
	「あーっ！！<br />
	　藤くん、そういうこと言うー！？」<br />
	<br />
	「ほーら、そうやって騒ぐから」<br />
	<br />
	藤丸と龍之介のやり取りに、天馬も含めてクラスメイト全員が笑い声を上げた。<br />
	笑いの収まらない中、バスは出発した。<br />
	<br />
	バスが出発しても相変わらず車内は騒がしかった。<br />
	藤丸の言った通り、このクラスだけバスが違っていて良かった。<br />
	そうでなければ苦情が出ていただろうと思われるほどだった。<br />
	特に、龍之介が早くもお菓子の袋を開けてポップコーンをばら撒いて藤丸に怒られていた時は、腹がよじれるほどに笑った。<br />
	校外学習を前にして、体力を使いきるかと思えるほどに楽しかった。<br />
	<br />
	その車内が、徐々に静まり返っていくのも、騒ぎ疲れてたので仕方のないことだと思った。<br />
	隣に座っていた千晴がもたれかかってきたのも、かおるが舟を漕いでいたら窓ガラスに頭をぶつけたのに起きなかったのも、萌が折り合いの悪い晶子と寄り添うように眠っていたのも、何一つ不思議に思わなかった。<br />
	いや、そのような疑惑を抱けないほどに、天馬も眠気に襲われていたのだ。<br />
	目的地に着いたら、また騒げばいい。<br />
	そのための英気を養うためにと、天馬は眠気に逆らうことなく目を閉じた。<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	◆</font><br />
	<br />
	<br />
	<br />
	<font color="#808080"><font size="-1">卒業まであと半年。<br />
	頭ではわかっていても、まだ現実感がない。<br />
	みんなで一緒に勉強して遊んで馬鹿なことをして、今日も明日も明後日も過ごす。<br />
	何の疑問もなく、そう思っていた。<br />
	<br />
	まさか、その生活が今日幕を閉じるだなんて。</font></font><br />
	&nbsp;<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	<br />
	【残り６人】</p>
]]>
    </description>
    <category>本編</category>
    <link>https://rokudourinne.3rin.net/%E6%9C%AC%E7%B7%A8/%E8%A9%A6%E5%90%88%E9%96%8B%E5%A7%8B%EF%BD%9E%E5%B9%B3%E7%A9%8F%E3%81%AE%E5%B9%95%E5%BC%95%E3%81%8D%EF%BD%9E</link>
    <pubDate>Fri, 18 Feb 2011 15:28:15 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">rokudourinne.3rin.net://entry/4</guid>
  </item>
    <item>
    <title>プロローグ３</title>
    <description>
    <![CDATA[<p>&nbsp;</p>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">時が止まってしまえばいいと、願わずにはいられない。<br />
<br />
◆<br />
&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">腕にはめたお気に入りの腕時計に目を落とすと、時計の針はすでに20時半を差していた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。先程まで友人達と共に居た騒がしさはなく、今はただ二つの静かな足音だけが月明かりに照らされた帰路に響いていた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#0000ff">神尾龍之介（男子3番）</font>は隣を歩く少女を横目で盗み見、伸びた前髪を日に焼けた右手で掴んだ。彼女の、クールな印象を与える釣り目気味の目元。小さな顔にかかる黒髪。龍之介程ではないが、少しだけ日に焼けた細い指先。彼女を形作るパーツのひとつひとつに目をやっては逸らし、行き場のなくなった手をポケットへと仕舞い込む。---あぁ、俺の意気地なし！</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">幼馴染である彼女---<font color="#ff99cc">中條晶子（女子2番）</font>と付き合い始めたのは、最近のことではない。生まれたときから当たり前のように隣に居て、ずっと一緒に育ってきた彼女を特別に想うのは龍之介にとってごく自然なことだった。それは晶子にとっても同じだったらしく、初めて龍之介が想いを伝えたとき、晶子は「そう。」と呟いただけで読んでいた本から顔を上げることはなかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">『あの時は緊張しすぎて死ぬんじゃないかと本気で思っていた。自ら崖に飛び込んでいくような、そんな気分だった。』</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">後に晶子にそう話すと、晶子はとても驚いた顔をしていた。龍之介の気持ちなど、とっくの昔にお見通しだったらしい。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">恥ずかしさと情けなさで俯いた龍之介の姿に彼女はひとしきり笑った後、不意に龍之介の胸に顔を埋め、小さくこう呟いた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">『龍之介、大好き』</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もうあれから大分立つのにも関わらず、今思い出しても顔が熱くなるのが分かった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">火照った顔を冷え性の冷たい手（未だ夏の終わりだというのに、この冷たさは少し異常ではないかと思う）で押さえていると、隣からふふ、と小さな笑い声が聞こえた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">慌てて隣の晶子に目を向けると、晶子が不意を付いたかのように顔を覗き込んできた。切れ長の聡明そうな彼女の瞳に、真っ赤な顔をした自分が映っている。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「顔、真っ赤。エロいこと考えてるんだ？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ち、ちげーよ！&hellip;暑いんだよ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">真っ赤になって否定している自分には、相当説得力がないのだろう。晶子は勝ち誇ったような表情で、龍之介の少し前に足を進めた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そして振り返り、ラベンダー色の制服から伸びた細い腕を差し出す。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ほら、手繋ぎたいんでしょ？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">相変わらず自信満々な上から目線。これが晶子の短所であり、長所でもある&hellip;と考えているし、龍之介の好きなところでもある。が、こんな感じで毎回こられても、リードしたいと思っている龍之介にとっては癪に障ると言う訳だ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">晶子め！俺がその手を取ると思ったら大間違いだぞコノヤロー。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">と思いながらも、晶子の指先の引力に負けて彼女のそれとは違う、日に焼けた自分の荒れた手を伸ばしてしまった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「やっぱり冷たい。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「冷え性なんだよ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ふふ、知ってる。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">普段、教室では絶対に見せてくれない表情。２人が在籍する三年星組では、頼れるお姉さんといった、いつも冷静で大人っぽいというキャラで通っている晶子だが、龍之介といる時だけはくるくると子供のように表情を変える。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">龍之介が彼氏ということ以上に、幼馴染という関係が彼女に安心と信頼を与えているのだ。きっと。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そうか、信頼されているのか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">考えると、ふいに心の奥がちくりと痛んだ。晶子のことは大好きだけれども、晶子との関係を誰にも知られたくない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そんなことを思う自分がとてつもなく醜いと思った。<br />
&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">『俺、好きな子できた。』</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もう3ヶ月以上も前のことだ。昼休み、いつものようにクラスでたった2人の同性である<font color="#0000ff">大塚千晴（男子１番）</font><font color="#000000"><font color="#0000ff">、</font></font><font color="#0000ff">柏谷天馬（男子２番）</font>と共に購買で買った安いパンをかじっている時のことだった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">普段は3人で部活の話や、最近みんなではまっているミュージシャンの話など、思春期の少年たちが集まっている割に色恋沙汰と無縁な会話ばかりだっただけに、天馬のその言葉はやけにはっきりと龍之介の耳に届いた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「いや、あの、まだ、わかんないんだけど、たぶん。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">一瞬の沈黙の後、口を開いたのは他でもない天馬だ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しどろもどろになりながら、顔を真っ赤にさせて天馬は俯いてしまった。この状況にどういった言葉をかけるのが正解なのだろう？簡単に好きな子誰？なんて聞いていいものなのだろうか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうすればいいかわからず、隣の千晴に視線を移すと千晴の細身の肩が小刻みに震えているのが見えた。この状況で、千晴が泣くなんてことはまずありえない。どうやら、天馬の様子に笑いをこらえているようだった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">龍之介の視線に気がついた千晴は、小さくごめんと口を動かすと、天馬にばれないように息を整えていた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「天ちゃんやるじゃん！で、相手は誰？成瀬さんとか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">龍之介がためらった言葉を、千晴は簡単に口にした。千晴が真っ先に候補に挙げたのは、学校一の美少女であり、天馬とも仲が良い<font color="#ff99cc">成瀬萌（女子3番）</font>の名前だ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「は？ちげーよ。なんで成瀬になるんだよ？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あれ？違うの？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">違うよ、天馬は少しバツが悪そうにそう答えた。龍之介も千晴と同じく真っ先に浮かんだのが萌の顔だったので、正直天馬の答えには驚いた。それと同時に、嫌な予感が龍之介の頭を過ぎった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「じゃぁ、誰？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">明るく、からかうように言ったつもりが、若干声が震えてしまったことに2人は気づいていただろうか。顔を上げた天馬と目が合った。真っ赤な顔の、普段の生意気そうな瞳が純粋な想いに輝いているように龍之介には見えた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">天馬は手に持ったパンを一口かじると、伏し目がちに、伸びた前髪を触りながら彼女の名前を呟いた。それらはすべて、天馬の照れ隠しの仕草だった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「&hellip;中條」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「え、マジで！？意外だなぁ。絶対成瀬さんだと思ったんだけど&hellip;」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「だから、なんで成瀬なんだよ&hellip;」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">千晴の視線から逃れるように、「なぁ」と天馬がこちらを向いたけれど、龍之介はそれに曖昧な笑いで答えるのが精一杯だった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この時もうすでに龍之介と晶子は恋仲だったのだが、幼馴染から関係が変化したというなんともいえない恥ずかしさから、龍之介はそのことを2人に言えずにいた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もともと晶子は自分のことを人に話すタイプではない。そのため、2人の関係の変化を知る人は誰もいなかったのだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もう少し、恋人という新しい関係に慣れたら、2人には必ず話そうと思っていた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">きっと2人共びっくりするだろう。でも、きっと喜んでくれる&hellip;。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そう思っていたのだけれど、まさか、天馬が晶子のことを好きになるなんて、夢にも思っていなかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">こんなことならば、もっと早く、晶子とのことを打ち明けるべきだった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうにもならない後悔が波のように打ち寄せて、龍之介は言葉を失ってしまった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「なぁ、龍。中條ってさ、好きな奴とかいるのかな？龍は幼馴染だろ？聞いたことある？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">真っ直ぐな、それでもどこか不安に揺れる天馬の目に、ごくりと唾を飲み込んだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">俺は臆病者だ。あの時生まれて初めてそう思った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">晶子の細い手の体温を感じている今でさえ、罪悪感に押しつぶされそうだった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「応援するよ」などという、心にもない言葉をどうしてあの時天馬に言ってしまったのだろう。今でも分からない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ただ覚えているのは、天馬のはにかんだ笑顔だけだ。その顔を見て、龍之介が取り返しの付かないことをしたのだと気づいた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">あれから、天馬から晶子の話を聞く度に胸が痛くなる。ずっと小さな棘が心に刺さっているような感覚だった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この手を離すつもりなんて、毛頭ないくせに。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もしかしたら、晶子とのことを正直に話せば、天馬は応援してくれるではないだろうか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そんなことを思いながらもずっとこのままの状態でいるのは、単に自分が天馬に嫌われるのが怖いからだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ねぇ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">晶子が、繋いだ手を強く握った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「最近、どうしたの？なんか前みたいにベタベタしてこないじゃん。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そう言って、晶子はにやりと笑った。彼女にとっては何気ない龍之介をからかうための一言だっただろうけれど、龍之介はどこか後ろめたい気持ちが増すのを感じずにはいられなかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">それ以前に、晶子とこうして手を繋いで歩いている今が何か悪いことをしているような気分でならなかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">手を繋いだり、キスをしたりという欲よりも、晶子と付き合っているということを誰にも知られたくないという思いのほうが強いのだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">こんなこと、もちろん晶子には話したことはないし、もちろん話すつもりもない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「龍之介？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">いつの間に俯いてしまっていたのだろう。晶子が、心配そうに龍之介の顔を覗き込んでいた。晶子の切れ長の瞳が、睫毛に隠れ不安の色に揺れる。<br />
晶子は、本当はすべて分かっているんじゃないだろうか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">彼女の不安を拭い去りたい一心で、龍之介は急いで顔を上げ笑顔を作って見せた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「龍之介が元気じゃないと、調子狂うよ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">晶子の影が近づいて、繋いでいた手が離れたかと思うと、晶子が今度は手のひらを龍之介の日に焼けた頬に添えた。そしてゆっくりとキスを唇に落とす。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何が起こったかわからず呆然と立ち尽くす龍之介を見て、晶子が小さく笑った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">その笑顔はいつもの皮肉めいたものではなく、とても柔らかなものだった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">---あぁ。どうしても、捨てることなんてできない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">思わず目の前の晶子を引き寄せて、抱きしめる。一瞬頭に天馬の顔が浮かんだが、それを振り切るかのように晶子の身体を強く抱きしめた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">このまま、時間が止まってしまえばいい。そうすれば、天馬のいい友人でありながら、こうして晶子を抱きしめていられるのに。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そんな汚いことを考える自分が、嫌いで仕方がない。けれど、それでも。<br />
<br />
そう願わずには、いられないのだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>]]>
    </description>
    <category>プロローグ</category>
    <link>https://rokudourinne.3rin.net/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0%EF%BC%93</link>
    <pubDate>Tue, 28 Sep 2010 13:50:01 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">rokudourinne.3rin.net://entry/3</guid>
  </item>
    <item>
    <title>プロローグ　２</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">前世があると人は言う。</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">来世があると人は言う。</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">生きとし生けるものは輪廻すると人は言う。</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">◆</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">教室の窓からは、心地よい風が吹き込み、グラウンドで活動している生徒たちの活気に満ちた声が遠く聞こえる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そんな爽やかさとは正反対の表情を、少女は浮かべていた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「こらー、そんなぶーたれた顔してたら戻らなくなるぞー？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「萌の顔はそんなヤワじゃないですぅー」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">担任の藤丸英一に丸めたプリントでぽんっと頭を叩かれ、<font color="#ff99cc">成瀬萌（女子３番）</font>は赤みの差した頬を膨らませ、藤丸を見上げた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">栗色のふわふわとした髪、透けるような白い肌、大きい瞳に長い睫毛、見る者の視線を釘付けにする愛らしい唇――自他共に認める古山中学校一の美少女である萌に見上げられた藤丸は、思わず顔を背けた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「藤くーん、もう疲れたぁ！　萌、数学嫌いだもん、見逃して？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「残念無念、可愛い生徒の頼みでも、それはだーめ。　そのプリントが終わるまでは帰れないからな？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「やだやだぁ、飽きちゃったもん」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あのなぁ&hellip;萌、お前ね、教師がこう言うのもアレなんだけど、龍に負けたら駄目でしょ」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「う&hellip;&hellip;それは&hellip;&hellip;」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌は言葉を詰まらせ、溜息を吐いた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">今朝の数学の抜き打ち小テストで、萌はクラス最低点を取った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">元々数学は大の苦手なのだが、今回は間違えて覚えていた公式を当てはめて全ての問題を解いてしまったので、学力においては不動のクラス最下位である<font color="#3366ff">神尾龍之介（男子３番）</font>にも点数が及ばず、放課後補習を受ける羽目になってしまった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">藤丸は本来は数学教師ではないのだが、担任として付き添ってくれているのだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「&hellip;ほら、もう一息、頑張りなって。　頑張る萌のために、ご褒美持ってきてあげるからさ」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">藤丸は萌の頭を優しく撫でてから、教室から出て行った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この学校の男性教師は皆萌には甘いのだが、藤丸は誰よりも弱いと思う。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">先日も萌の&ldquo;お願い&rdquo;で、藤丸は生徒６人にラーメンを奢ることになった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">これも全て恵まれている容姿のおかげだ、と萌は自負している。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">これまでもこれからも、この類い稀なる愛らしさを最大限に利用して生きていく――それが、最も楽に楽しく生きられる方法なのだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しかし、どうやら目の前にある数学のプリントは、萌の容姿をもってしてもどうにもならないようなので、しぶしぶ数字と向き合うことにした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ｘとかｙとか変に曲がったグラフとか、人生にとって物の役にも立たないと思うのに、どうしてこんなことをしなければならないのか――無意識に眉間に皺が寄る。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&hellip;ああいけない、萌の可愛い顔が台無しじゃない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">お気に入りのピンク色のシャーペンの尻で、眉間をぐりぐりと押さえた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あれ、成瀬？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">不意に名前を呼ばれ、萌は顔を上げた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">声の主は男の子――萌の表情筋が反射的に働き、輝かんばかりの笑顔を作り上げた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">といっても、学校のアイドル的存在である萌のことを苗字呼び捨てで呼ぶ男子生徒は、他クラスの男子を入れても限られており、笑顔を作り上げなければならないような遠い仲ではないので必要ないのだけれど。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌の想像通り、ドア付近に立っているのは、クラスメイトの<font color="#3366ff">柏谷天馬（男子２番）</font>。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">前髪の左側を青いピンで留めて伸ばした後ろ髪を後ろで束ねるという校則完全無視の髪型だが、顔には十分に幼さが残っており、身の丈に合っていない制服のダボダボ感が更にそれを助長させている――星組のマスコット的存在だ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「天ちゃん、どうしたの？　部活じゃないの？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「男バス今日部活ないし。　忘れ物したから取りに来ただけ」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">天馬はぶっきらぼうに（それでも可愛く見えてしまうのは何故だろう）言うと、机の横にぶら下げていた弁当箱の入った袋を手に取り、萌の前に立った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ふーん、補習？　ま、龍に負けるとか、ありえないしね」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌は天馬を見上げ（この上目遣いで幾人もの男を虜にしてきた）、ぷうっと頬を膨らませた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「た、たまたまだもん、今回は調子が悪かったんだもん！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「調子とか&hellip;あ、そこ、右辺を２倍にしたら左辺も２倍。　調子じゃなくて数学頭が悪いんじゃないの？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">天馬は眉間に皺を寄せたまま溜息を洩らし、自分の椅子を引っ張ってきて、萌の前に座った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌が目を丸くさせると、天馬は相変わらずのツンとした愛想の悪い表情のまま、ふいっと顔を背けてプリントを指差した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「とっとと終わらせて帰ろうよ、成瀬」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">天馬は萌に対しては冷たい、と萌は思っている。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">実際は、クールな性格こそが大人びていてかっこいいと思っている天馬の、背伸びした対人対応であり、萌に対してだけではないのだが。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しかし、そうした対応に腹が立たないのは、天馬にはこうして忘れ物を取りに来ただけなのに補習に付き合ってくれる人の良さがあるからだろう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌は指摘された計算間違いを直しながら、天馬ににっこりと笑みを向けた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「天ちゃん、萌のこと、好きになっちゃ駄目だよ？　萌、天ちゃんをそういう目で見れないもの」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「はぁっ！？　何言ってんの、俺、別に成瀬に興味無いし！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#ff99cc">&nbsp;</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ふふっ、知ってるぅ」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌はくつくつと笑った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">天馬の片思いの相手は、星組女子内で最も大人びている<font color="#ff99cc">中條晶子（女子２番）</font>であることは、クラスメイトばかりでなく担任の藤丸までが知っている周知の事実だ（知らないのは晶子本人と、そういうことには疎い<font color="#ff99cc">櫻田かおる（女子１番）</font>くらいなものだろう）。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「とっとと告白しちゃえばいいのに&hellip;これだからお子様は」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「お子様って言うなっ！　&hellip;やだよ、男の方がチビとかかっこ悪いじゃん」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">天馬は純な人間だな、と思う。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そんな拘り、萌にしてみれば馬鹿らしいのだけれど、女子にしては長身である晶子よりも身長が高くならない限りは告白しないという天馬の決意は愛おしいとも思う。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「やっぱ天ちゃんって可愛いよね、萌嫉妬しちゃう」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「可愛いって言うなっ！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">でもさぁ、と、萌は頬杖をついた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「正直、時間ないよぉ？　卒業したら、みんな&hellip;みんなばらばらになっちゃうんだから」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">天馬は僅かに目を見開き、視線を下に落とした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">あと半年で、萌たちはこの学び舎を巣立つ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">たった6人しかいないクラスメイトたちの進路はばらばらであり、皆で勉強することも遊ぶこともラーメンを食べに行くことも、そう簡単にはできなくなるだろう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もう半年しかない、あと半年もある――考え方は人それぞれだが、誰もが心のどこかに引っかけている寂寥感を、萌も天馬も持っていた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「&hellip;まあ、萌は天ちゃんと違って奥手じゃないから？　卒業までには、龍之介くんの心を萌のものにしてあげるけどね♪　&hellip;てか、晶子ちゃんはその障害なんだから、天ちゃん頑張ってくれなきゃ！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「またわけのわかんないこと&hellip;龍と中條はただの幼馴染じゃん」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「幼馴染って響きが嫌なのっ！！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「&hellip;わけわかんないし」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そう、萌は男の子は皆好きなのだが（むしろきっと男の子たちが萌を好きなんだ、と思う）、中でも龍之介のことは特別に思っている。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">少し頭が弱いが、容姿は整っていて申し分ないし、運動神経抜群でサッカー部のエースというところもポイントが高く、何よりも明るくて優しい性格がたまらなく萌の好みなのだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そんな意中の相手には、女の子の幼馴染がいる――作り物の物語であれば、それは恋愛に発展する可能性が非常に高いので、気に食わない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">元々甘えん坊で我儘な萌と、大人びていてクールな晶子とは折り合いが悪く関係はギスギスしているのだが、晶子が龍之介の傍にいるということが、それに拍車を掛けている。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「晶子ちゃんと天ちゃんがくっつけば、萌が龍之介くんとくっついて円満解決！　&hellip;ってなるんだから――って、あ、もう４時！？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌はばっと立ち上がり（天馬がぎょっとした表情で萌を見上げた）、慌てて教室に備え付けられているテレビの電源に手を伸ばした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">本来は授業で使用するためのものであり、それ以外の用途で使用してはいけないのだが、そんなことは意に介さず、萌はチャンネルを変えていく。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「萌の好きなドラマの再放送が始まるじゃない！　えっと&hellip;何チャンネルだったかなぁ&hellip;」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「なーるーせー、お前ね、プリント早く終わらせようよ」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「やーだっ！　数学とドラマ、どっちが大事だと思ってんの？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「いや数学やって帰ろ――」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">テレビから流れてきたとある言葉に、天馬は文句を中断させてテレビ画面に視線を上げ、萌も口を噤んで画面に映る女性アナウンサーを凝視した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">『――で行われていた戦闘実験第六十八番プログラムが、先刻終了しました。　優勝者は女子生徒で、現在は病院で治療を受けているとのことです。　今回対象になったクラスは――』</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">戦闘実験第六十八番プログラム――簡単に言えば、対象となった中学３年生のクラスメイトが最後の１人になるまで殺し合うという、政府が主催している実験だ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">大東亜共和国にとっては防衛上必要のあるものらしいが、萌たち中学３年生にとっては、たとえ１年に全国から５０クラスしか選ばれないとはいえ、いつも心に引っかかっている恐ろしい死刑宣告のようなものだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">画面が切り替わり、優勝者という女子生徒が画面に映った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">両脇を兵士に固められた全身を赤黒く染めた少女は、カメラの方をじっと見つめ、口の端を僅かに吊り上げ、笑みを浮かべた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">力無く、しかし修羅の如きそれに、萌の後ろで天馬が呻き声を上げた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「&hellip;不気味&hellip;&hellip;萌ならもっと可愛く笑ってみせるのに」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「馬鹿、殺し合いした後に、そんなことできるわけないじゃん」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">溜息混じりの天馬の指摘に対し、萌はくるっと振り返り、にっこりと笑んだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">背後に映る少女の笑みとは真逆の、天使の如く愛らしい笑みだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ううん、萌ならやってみせるよ？　どんな時だって、たとえ誰かを殺さなきゃいけなくなったって、そう。　萌は可愛くあり続けるんだから！」</div>
<div style="text-indent: 10.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">爽やかな風が吹き抜ける教室はそれほど暑くはないのだが、萌をじっと見つめている天馬の額には、うっすらと汗が滲んでいた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「成瀬、お前、もしもうちのクラスがプログラムに選ばれたら&hellip;どうする？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「&hellip;萌？　萌はねぇ――」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;<br />
&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「こらー！　勝手にテレビを点けるなー、てかプリント終わったのかー？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><br />
&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">藤丸の大声に、萌と天馬はばっと教室の入り口に目を向けた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しかめっ面をした藤丸が、天馬に視線を向け、目を丸くした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あれ、天馬、今日は部活がないから早く帰るって言ってなかったか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「え、あ&hellip;ああ、うん、そのつもりだったんだけど&hellip;」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「萌が終わるの待っててくれてるんだよぉ、天ちゃんは」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌はテレビの電源を切り、小走りで自分の席に着いた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何事もなかったかのように、シャーペンを走らせる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">天馬も一つ大きく息を吐くと、「あ、そこまた違うし」、といつもと変わらないツンとした口調で萌のミスを指摘してきた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「萌頑張れよ、終わったらプリン持ってきたから食べようなー？　２つ持ってきてるから、天馬も食べるか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「&hellip;あ、余ってんなら、食ってやってもいいけど？　別に、甘い物とか、好きなわけじゃないんだけどさ、余ってるなら」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「好きじゃないなら藤くんにあげちゃえばー？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「え&hellip;いや、腹減ってるから、食べてやるってば」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「はいはい、じゃあ萌と天馬にあげるから、萌はさっさと終わらせような？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もう、天馬は訊いてこなかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">萌も答えない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">意味のない質問だ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうせ、全国に何万とある中学３年生のクラスの中から、たった６人しか在籍していない小さなクラスなど、プログラムに選ばれるわけがないのだから。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">あと半年、普通に生活して、勉強して、遊んで、卒業していくに決まっているのだから。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;<br />
&nbsp;◆</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">前世があると人は言う。</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">来世があると人は言う。</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">生きとし生けるものは輪廻すると人は言う。</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">&nbsp;</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">いいや、そんなものなど、ありはしない。</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">恵まれたこの人生は一度きりなのだから、後悔しないように生きていく。</font></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080">たとえ、何を犠牲にしても。</font></div>]]>
    </description>
    <category>プロローグ</category>
    <link>https://rokudourinne.3rin.net/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%80%80%EF%BC%92</link>
    <pubDate>Mon, 15 Mar 2010 11:02:01 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">rokudourinne.3rin.net://entry/2</guid>
  </item>
    <item>
    <title>プロローグ</title>
    <description>
    <![CDATA[<span style="font-family: ＭＳ Ｐゴシック"><span lang="EN-US"><o:p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">季節が巡るように</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">心が移り行くように</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">雨が空へと還るように</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></font><span><o:p></o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">俺の命が消えた暁には、色を変え、形を取り戻し、何処かに辿りつくのだろうか。</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">◆</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「ハルちゃん？」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">穏やかな春の鳥の囀りにも似た、優しげなソプラノボイスが耳元で響いた。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">その心地よさにゆっくり眠りの世界へと誘われた瞼を持ち上げると、少し前は真っ青だったはずの空がいつの間にか茜色に姿を変え、目の前に広がっている。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「部活中、急にいなくなったからどうしたかと思ったら、こんなところでお昼寝？」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">その茜色に、小さな影が落ちた。艶やかな黒のサイドポニーを揺らし、眼鏡の奥の瞳を緩ませるのはクラスメイトでもあり、美術部の仲間でもある<font color="#ff99cc">櫻田かおる（女子１番）</font>だ。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">部活の途中で抜けて来たのだろうか。かおるは油絵を作成する際に身につけるダークブラウンのエプロンをしたままだった。エプロンは古い絵の具から先ほど付いたであろう真新しい絵の具まで、様々な色で薄汚れている。その中の鮮やかなブルーがやけに目に沁みて、<font color="#3366ff">大塚千晴（男子１番）</font>は開いたばかりの瞳を細めた。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「かおるちゃん」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">自分の口から出た声は小さく、今にも消えてしまいそうだと千晴は思った。だがかおるはそんなことなど気にも留めない様子で、未だ寝転んだままの千晴の横にしゃがみ込む。かすかに香る油絵独特の香りが、かおるの甘い香りと混ざって鼻腔を突いた。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">ぼんやりと熱を帯びた上半身をやっとのことで起すと、初秋の冷たい風が頬を掠めて通り過ぎていくのを感じる。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">やっと同じ高さで目線が合うと、かおるはにっこりと笑い視線を燃えるような空へと滑らせた。確か、今かおるが描いているのは、透き通る程の蒼を使った空のだ。今の空は、彼女が描いている空とはあまりにも違う。それでもかおるはそれを綺麗だと顔を綻ばせる。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「ねぇハルちゃん、あの雲、いちごの乗ったショートケーキに似てない？」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">かおるが喜々として指差したのは、歪な形をした大きな雲だった。丁度三角形のような形をした雲と小さな丸い雲がくっついて、かおるの言うとおりケーキのような形になっている。千晴はふっと笑いを零し、そうだね、と呟いた。そして隣の雲を人差し指で差す。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「じゃぁあれはさ、なんに見える？」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「んーと、ソフトクリーム？」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「あたりー。じゃぁ、あれは？」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「えー？うーん。ひつじさん。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「ブー。龍の家で飼ってるトイプードルの小次郎でしたー。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「あはは！確かに似てるねぇ。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">小次郎、元気かなぁ。そう呟き、声を立てて笑うかおるに目をやると、かおるの頬にあるそばかすが夕日でオレンジ色に染まっているのが見えた。彼女のチャームポイントである（と千晴は思っている）それは、かおるが笑うのと一緒に上下に動くのだ。千晴はかおるも気づいていないであろうその癖がとても好きだった。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">寝起きの重い身体を持ち上げ、のろのろと立ち上がる。すると今まで空を見ていたせいか、単に屋上にいるせいか、幾分か空が近くなったような不思議な感覚に陥った。あぁ。立ちくらみ、だ。白くぼやける頭をなんとか平静に戻しながら、自分の運動不足の身体を情けなく思う。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">起きた？と無邪気なかおるの声がした。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「ハルちゃん、そろそろこんなところで寝たら風邪引いちゃう季節だよ。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「うーん。わかってはいるんだけど&hellip;。俺のベスポジだからね、ここは。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「ベスポジ？」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「ベストポジション。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「ふふ、そーなの？確かに気持ちいいもんね。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">千晴にとってここ屋上は、狭い学校内でも指折りのお気に入りの場所だ。晴れの日は決まってこの場所へ足を運ぶのが入学当初からの千晴の日課だった。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">少し前までは暖かく、絵を描くにも、昼寝をするにも最高に適した環境が整っていたのだが９月の下旬ともなれば夕方には冷たい風が吹く。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">もうすぐ、唯一ここから足が遠ざかってしまう季節がやって来る。寒いのはなによりも苦手だ。ぶるっと身震いをしてポケットに手をやると、かおるがねぇ、と小さく首を傾げた。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「ハルちゃんは、高校どこ受けるの？」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">唐突な質問に思わず唾を飲み込んだ。それに気が付いたのか、かおるが不安げに眉を下げる。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「どうしたの、急に。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">淡々とした調子でそう返すと、かおるは千晴の隣から数歩足を進め、屋上のフェンスに細い指をかけた。フェンスの向こうには、練習を終えた運動部の姿がちらほらと見える。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">かおるはそれを見つめ、小さく息を吐いた。彼女の丸い瞳が、ゆっくりと曲線を描く。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「もうすぐ、卒業でしょ？なんだかこれまでずっと一緒にいたのに、寂しいなぁって。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「&hellip;もうすぐって、まだ半年もあるよ？かおるちゃん、気が早いよ。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">笑い交じり言った言葉に、かおるが振り返った。そして千晴は息を呑んだ。かおるの眼鏡の奥に、光るものが見えた気がしたからだ。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">だが次の瞬間にはもう、かおるの顔にはいつも通りの笑顔が浮かんでいた。自分のみた涙は、見間違いだったのだろうか。混乱しているうちに、夕日に当てられたかおるの表情が再び見えなくなり、それと同時にかおるが口をひらく。その声色は、とても穏やかな物だった。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「半年しか、だよ。私、あっこちゃんとも萌ちゃんとも志望校違うし&hellip;。みんなと離れ離れになっちゃうなってよく考えるんだ。</span><span lang="EN-US">3</span><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">年間すごく楽しかったから、離れがたくなっちゃってるんだね。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">気が付けば、彼女から視線が逸らせなくなっていた。卒業なんてまだまだ先、と笑っていた千晴だが、彼らと離れてしまうことを思うとどこか、ぽっかりと胸に穴が開いたような気分になった。そうか。もう半年後には、自分はここにいないのか。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">あの油臭い美術室で無心になって筆をはしらせる事も、友人と教室で騒ぐ事も、窓際の席で陽だまりの中大好きな音楽を聴く事も。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">そして、かおるとこうして二人で話したりすることも、もう無くなってしまうのだ。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">とてつもなく痛む胸をラベンダー色のワイシャツの上から押さえつけ、かおるに背を向けると屋上と校舎を繋ぐドアへと足を進めた。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">背中にかおるの視線が突き刺さる。ハルちゃん、とどこか震えるような声が聞こえたがなぜか千晴は振り返ることが出来なかった。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「あー！！こんなとこにいた！！」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">突然、屋上のドアが勢い良く開いたと思うと明るい声がそこから上がった。そこから顔を覗かせたのは、同クラスの</span><font color="#3366ff"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">神尾龍之介（男子</span><span lang="EN-US">3</span><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">番）</span></font><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">と<font color="#ff99cc">中條晶子（女子２番）</font>だ。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">龍之介の明るい茶髪が風に靡き、彼の整った顔を露わになった。千晴とかおるを見つけた途端ぱあっと顔を明るくし、龍之介が二人に駆け寄る。いつも着ているカーディガンを着ておらず、ネクタイを占めていないところを見るとどうやら部活後のようだった。そう思うと、心なしか日に焼けた肌が汗に濡れているような気がする。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「二人とも探したよ！美術部の顧問に聞いてもさ、どっか行っちゃったよーとしか教えてくれないし。ほーんと、適当な部活だよなー！」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">そう言って切れ長の瞳を細めると、龍之介が千晴の暗い茶色の髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。それを腕で軽く払いながら、どうしたの？と龍之介に向かい問う。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「藤くんが帰りラーメン奢ってくれるって言うから呼びに来たんだよ！萌ちゃんのおねだり攻撃で撃沈！な、あっこ！」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「うん。藤くんってば萌の『おねがぁい』に弱いから。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">呆れたように呟く晶子に、隣の龍之介が苦笑を漏らす。二人の言う</span><span lang="EN-US">&rdquo;</span><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">藤くん</span><span lang="EN-US">&rdquo;</span><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">とは我が三年星組の担任である藤丸英一先生のことだ。</span><span lang="EN-US">22</span><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">歳の新任教師で、未だに抜けない学生的なノリが生徒に受けている。その藤丸が学校一の美少女といわれる</span><font color="#ff99cc"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">成瀬萌（女子</span><span lang="EN-US">3</span><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">番）</span></font><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">に掌の上でうまく転がされている姿は簡単に想像できてしまった。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「よし！というわけで、藤くんの気が変わらないうちに行こー！お前ら、早く片付けて教室集合な。天ちゃんも待ってるから！</span><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">」</span></p>
</o:p></span></span><span style="font-family: ＭＳ Ｐゴシック"><span lang="EN-US"><o:p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「&hellip;そんなに急かさなくても。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「何言ってんだよあっこ！ラーメンは逃げちゃうんだぞ！」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt">見るからにあまりノリ気ではなさそうな晶子の腕をぐいと引っ張ると、龍之介がスキップをしながら屋上の扉を開く。どうやら、龍之介の言葉から推測すると<font color="#3366ff">柏谷天馬（男子2番）</font>も教室に居るようだ。&nbsp;今日はクラス全員で、ラーメンパーティといったところらしい。</p>
<span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century"><br />
校内に吸い込まれるように消えていく二人の背中を見送ってから、ゆっくりと後ろを振り返ると、目が合ったかおるが優しく微笑んだ。</span>&nbsp;</p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">「行こうか、かおるちゃん。」</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">夕日が、彼女の小さな身体を同じ色に染める。それを素直に眩しいほど綺麗だと思ったのは一生心にしまっておこう。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">かおるが小走りで千晴に駆け寄り、隣に並ぶ。その子犬のような仕草を微笑ましく思うと同時に、先ほどのかおるの悲しげな表情が頭を過ぎった。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">それを振り払うかのように一歩前へと足を進める。秋を呼ぶ風が頬を掠めて通り過ぎていく。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">この時間がずっと続けばいいのにと、そんな、情けないことを考えているのが俺だけじゃないといいと千晴は静かに考えた。</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">◆</span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">季節が巡るように</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">心が移り行くように</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">雨が空へと還るように</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></font><span><o:p></o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">時も戻ればいい。永遠とも思える今という短い時間。</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span><o:p>&nbsp;</o:p></span></font><span><o:p></o:p></span></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt"><font color="#808080"><span style="mso-ascii-font-family: Century; mso-hansi-font-family: Century">俺の命が消えた暁には、色を変え、形を取り戻し、何処かに辿りつくのだろうか。</span></font></p>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</p>
</span></o:p></span></span>
<p class="MsoNormal" style="margin: 0mm 0mm 0pt">&nbsp;</p>]]>
    </description>
    <category>プロローグ</category>
    <link>https://rokudourinne.3rin.net/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0</link>
    <pubDate>Tue, 09 Mar 2010 16:09:36 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">rokudourinne.3rin.net://entry/1</guid>
  </item>

    </channel>
</rss>